大成建設は、視覚言語モデルを基盤としたマルチモーダル生成AIを活用し、土木工事の「全体施工計画書」作成を支援するシステムを開発した。
大成建設は2025年11月28日、画像と文書を同時解析する視覚言語モデル(VLM)を基盤としたマルチモーダル生成AIを活用し、土木工事の「全体施工計画書」作成を支援するシステムを開発したと発表した。作業時間を従来比で約85%削減でき、経験の少ない社員でも正確かつ迅速に施工計画書の作成が可能になる。
従来の計画書作成は正確性と高い専門性が求められることから、経験豊富な技術者の監督と指導の基、多数の担当者が手作業で行っていた。工事規模によっては500ページを超える場合もあり、作業負担と属人化が課題となっていた。
新システムでは、公共工事の入札公告や工事概要、特記仕様書などの発注情報と、受注の際に作成/蓄積した技術提案などの社内ナレッジを入力することで、AIの文書解析機能が施工計画書作成に必要な情報を抽出。抽出した情報と自社で作成した施工計画書記載事例を基に、マルチモーダルAIが専門用語、文章、図表を適切に組み合わせ、約10分で国交省の書式に準拠した原稿を自動生成する。作成した原稿は、規定書式のWord形式で出力。入力作業でのミスを抑制し、文章修正や図表の差し替えなども容易だ。
さらに、VLM出力の信頼性が低い箇所を自動特定する技術も開発し、誤認/誤情報の出力を抑制する。生成AI活用時のリスクの1つとされるハルシネーションを防ぎ、特定した箇所を経験豊富な技術者が精査することで、より高品質な文書の作成につなげる。利用者は施工計画書の作成プロセスを通じて、大成建設が培ってきた土木施工に関する技術や安全/品質管理に関する知見やノウハウを自然に習得できるため、人材育成にも寄与する。
大成建設は今後、新システムで確立した生成AIによる文書作成技術を全社へ展開し、業務効率化と品質向上を目指す。
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