AI活用9%の建設業界に活路 Arentの「アプリ連携型」と「AIブースト戦略」第9回 JAPAN BUILD OSAKA(3/3 ページ)

» 2025年09月16日 15時49分 公開
[松永弥生BUILT]
前のページへ 1|2|3       

自然言語で設計も工程管理も自動化

 Arentが展開しているAI搭載プロダクトは、その方向性を具体化している。2025年秋発売予定の「Lightning BIM AI Agent」によるRevitの自動操作デモンストレーション動画では、自然言語で「壁を作って」「窓を配置して」と入力すれば、自動で3Dモデルを生成した。

Lightning BIM AI AgentによるRevitの自動操作デモンストレーション Lightning BIM AI AgentによるRevitの自動操作デモンストレーション 提供:Arent
Revit上であいまいなワードによる特定オブジェクトの検索も可能に Revit上であいまいなワードによる特定オブジェクトの検索も可能に 提供:Arent

 Arentが大林組と協力して開発したAI工程管理アプリ「PROCOLLA(プロコラ)」のデモンストレーションでは、PDFの図面や見積書を読み込み、工種の分類や配置順などをプロンプトで指示すると、AIが工期のバーを引いて工程表を出力。工事別の現場業務をつなぐ工程管理を効率化してみせた。

 プラント設計用ツール「PlantStream AIDE」では、プラント設計でP&ID図(配管計装図)から、配管の始点から終点まで(接続リスト)を自動生成する。手動で行っていた設備機器の配置調整もプロンプトで可能になり、設計業務の省力化と精度向上を実現する。

 いずれのソリューションも「AIを特別なスキルなしで使える点が共通している」と鴨林氏は説明する。

「PlantStream AIDE」のプロンプトによる設備機器の配置調整 「PlantStream AIDE」のプロンプトによる設備機器の配置調整 提供:Arent

Arentが掲げる「AIブースト戦略」

 鴨林氏は、こうした人間に指示するのと同じように、チャット画面から自然言語で指示してソフトを操作する取り組みを「AIブースト戦略」と呼ぶ。対話型の生成AIが業務システムに組み込まれることで、ユーザーは意識せず自然に日常の建設業務の中でAIを活用できるようになる。

 世界的な潮流も同様の方向にある。自然言語でプログラミング開発できるコードエディタ「Cursor(カーソル)」は、わずか1年でARR150億円を突破し、ChatGPTを提供するOpenAI本体を上回るスピードで成長した。「AIを業務ツールに内蔵する」アプローチが、AIサービスを上回る成果を上げることを示している。

生成AI業界で急成長しているのは、AIエディターの「CURSOR」 生成AI業界で急成長しているのは、AIエディターの「CURSOR」 提供:Arent

 建設業界でも、BIMを基盤としたアプリ連携にAI自動化を組み合わせることで、現場の生産性は飛躍的に高まり、企業価値や競争優位性の強化につながる。鴨林氏は「AIを組み込むことで、誰もが自然にAIを使える環境を整えたい」と結んだ。

 鴨林氏が語ったArentの戦略は、単なる技術導入ではなく「アプリ連携型」と「AIブースト」による業務最適化だ。ERP型の限界を超え、BIMを基盤としたデータ活用を進め、AIを日常業務に自然に組み込む。これこそが建設DXを実現する道筋であり、今後の成長戦略の核心であるといえるだろう。

ArentのAIブースト戦略に基づくAIプロダクト群 ArentのAIブースト戦略に基づくAIプロダクト群 提供:Arent
「API」と「AI」でアプリを連携し、自動化と効率化を加速 「API」と「AI」でアプリを連携し、自動化と効率化を加速 提供:Arent
前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.