鹿島建設は、海上での斜杭式桟橋/ドルフィン(係留施設)の建設において、上部工のフルプレキャスト化を実現する「クロスパイルピア工法」を開発した。一般的な桟橋をモデルケースとした試算では、従来工法と比べ海上工事期間を50%、全体工事期間を15%短縮。現場作業に要する人員が20%削減可能で、建設コストは従来工法と同程度に抑えられることを確認した。
鹿島建設は2025年6月2日、海上での斜杭式の桟橋とドルフィン(係留施設)の建設において、上部工のフルプレキャスト化を実現する「クロスパイルピア工法」を開発したと発表した。海上作業の大幅な省力化が可能になる
今回、陸上で製作した上部工コンクリート(プレキャスト上部工)と斜杭頭部の接合構造を新たに開発した。桟橋/ドルフィンの上部工をフルプレキャスト化し、気象/海象条件の影響を受けやすい海上作業を大幅に削減する。これにより、海上工事の期間短縮、生産性、安全性の向上や環境負荷の低減などが期待できる。
一般的な横桟橋(15.8(幅)×150(延長)メートル)をモデルケースとした試算では、従来工法と比べ海上工事期間を50%、全体工事期間を15%短縮。現場作業に要する人員を20%、工事に伴うCO2排出量は10%削減可能で、建設コストは従来工法と同程度に抑えられることを確認した。
新工法は沿岸技術研究センターの「港湾関連民間技術の確認審査・評価事業」の評価証(第24005号)を取得済み。
桟橋とドルフィン上部工の構築は通常、足場/型枠/支保工設置、鉄筋組み立て、コンクリート打設まで一連の作業を海上で実施する。風や波浪、潮位などの影響による工程遅延や施工効率低下が課題となっていた。解決策として、プレキャスト上部工を陸上ヤードで製作し、海上に打設した杭上にクレーン船で一括架設するフルプレキャスト工法があるものの、斜杭式では品質確保と合理的な施工性の両立が困難で、フルプレキャスト化が進んでいなかった。
新開発の接合構造は、プレキャスト上部工に杭を挿入する一般的な方法とは異なり、仮受管を鋼管杭に被せ、その上面に鋼管杭と同じ斜角の鞘管(さやかん)を埋め込んだプレキャスト上部工を架設。鞘管と鋼管杭の中に小径の接合管を挿入する仕組みだ。
接合手順ではまず、海上に斜めに打設した鋼管杭の上部に仮受管を設置し、プレキャスト上部工をクレーン船で一括架設する。次に鞘管と鋼管杭の中に接合管を挿入し、シムプレート(鋼板)を接合管上部と鞘管に溶接。最後に、無収縮モルタルやコンクリートで斜杭頭部を充填し、プレキャスト上部工と斜杭頭部を一体化する。
鹿島建設は今後、斜杭式の桟橋/ドルフィン工事に新工法を積極的に提案していく方針だ。
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