プロジェクト発表会では前田氏以外にも、関連企業各社や実証実験に参加した自治体から代表者が集い、それぞれの市場への見解やWOTAに抱く期待の声を表明した。
公共インフラ分野のコンサルタントとして活動するEYストラテジー・アンド・コンサルティングの福田健一郎氏は、「このままでは2046年までに、全国1243自治体のうち96%で水道料金の値上げを起こしてしまい、中には家庭向けの一般的な水道料金が月2万円を超える地域も出てくる」と、水インフラの窮状について警鐘を鳴らした。
三菱UFJ信託銀行 法人マーケット統括部 副部長 鶴岡秀規氏は、自社で実績のある太陽光発電事業を紹介しながら、「WOTAの分散型システムにも引き続き出資を続け、同様のモデルを実現させていく」と意気込む。地域に根差した事業と金融で連携し合い、水インフラの課題解決に貢献したいとの考えを示した。
実証実験に協力した広島県竹原市 市長 今榮敏彦氏は、2018年の西日本豪雨で断水が発生した反省を生かし、10世帯を対象に導入し、集落単位での実証実験を行っていると報告。「実証エリアは市街地から遠く、標高200〜300メートルに位置しているため、水インフラ整備に多大なコストがかかる地域。だからこそ分散型システムを上手に活用できれば、約26%のコスト削減ができるというデータも出ている」とコメントした。
一方、2024年1月に起きた能登半島地震で被災した石川県珠洲市 市長の泉谷満寿裕氏と、副市長の金田直之氏も、「災害で7割以上の居住地が半壊し、70日に及ぶ長期断水に苦しめられたなか、WOTA BOXには大いに助けられた」とWOTAへの感謝を述べた。
最後に前田氏は、WOTAの2040年に向けたロードマップを公開。2023年を皮切りに行った先行導入をフェーズ1として、次のフェーズ2では「2030年までに導入を全国へ広げ、標準モデルを確立する」と掲げた。その先のフェーズ3では、2040年には持続可能な水インフラと健全な財政の確立を目指す。
公益社団法人日本下水道協会 理事長の岡久宏史氏は、「水循環システムを実現する装置がここまでコンパクトなものだと、初めは信じていなかった。機能を見てみて、素晴らしさに驚いている」と感嘆の声を上げた。前田氏は、「WOTAの取り組みは、今まさに第2段階に突入している。日本の水インフラを持続可能な形で次の世代に引き継いでいくためにも、さまざまな方たちと連携し合って、課題解決に挑んでいく」と言葉を結んだ。
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