深刻化する老朽化や資金不足、担い手不足。課題を抱える日本のインフラは、この後どのようにメンテナンスを進めればよいのだろうか。民間有料道路事業者の取り組みに、課題解決の可能性を探る座談会をレポートする。
日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)は、「ファシリティマネジメント フォーラム2024(第18回 日本ファシリティマネジメント大会)」を開催した。開催方式は会場開催(東京都新宿区・京王プラザホテル)とオンデマンド配信(配信期間:2024年2月22日〜3月18日)の2タイプ。メインテーマ「FMのチカラ−イノベーション経営を支えるファシリティマネジメント−」に沿った70を超える講演とシンポジウム、研究部会の活動報告の場が用意された。
JFMA研究部会の1つ、「インフラマネジメント研究部会」の活動報告では、「【直言!座談会】道路インフラマネジメントに民間ノウハウが活かせるだろうか?」と題した座談会を開催した。登壇者は、インフラマネジメント研究部会アドバイザーの八千代エンジニヤリングの水野高志氏、民間有料道路事業者の日本自動車道 増田真一氏と白糸ハイランドウェイの幸野茂氏。ファシリテータは、一般社団法人の日本観光自動車道協会 中川均氏が務めた。
座談会を開始するにあたって、水野氏が「我が国のインフラマネジメントの現在地と今後の取り組みの視点」の題目で提言。国土交通省の資料※をもとに、社会インフラの課題と、国の方針を整理した。
※国土交通省 総合政策局 公共事業企画調整課「国土交通省におけるインフラメンテナンスの取り組み」令和5年1月18日
水野氏によると、日本の社会インフラが抱える課題は大きく3つ。建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなっていること、そうした施設所有者の約7割弱を占める市町村では維持管理費(土木費)がピーク時から半減していること、そして市町村の土木技術系職員が減少しており、技術系職員が5人以下という市町村が全体の約5割に達していることだ。
こうした状況に国は、不具合が生じてから対応する「事後保全」から、不具合が生じる前の、損傷の程度が軽い段階で手当てして健全な状態に戻す「予防保全」への転換を呼びかけている。具体的な施策としては、「メンテナンスサイクルの確立」「施設の集約/再編など」「多様な契約方法の導入」「技術の継承/育成」「新技術の活用」「データの活用」「国民の理解と協力」の7つを示す。
水野氏は、「いかに予防保全を実現するか」が今後のポイントとした。また、7つの施策のうち、現場で対応する主たるものは、多様な契約方法の導入と新技術の活用の2つとし、「多様な契約方式の導入や包括的民間委託などの民間活用、民間のノウハウや新しい技術を展開することが求められている」との見解を示した。
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