分散型システムを実現するWOTAの一般家庭向け製品が、「WOTA Unit」だ。住宅の浴室やキッチン、洗濯といった生活排水の最大97%を安全な水に再生し、上下水道に接続せずに水を循環利用できる。不足分は雨水などで補う設計で、既存の上下水道インフラの有無にかかわらず、地域の事情に応じた柔軟な導入が可能だ。
従来のポータブル水再生プラント「WOTA BOX」が、膜処理と殺菌処理を用いていたのに対し、WOTA Unitは新たに微生物による有機物分解にも対応。膜への負荷を大幅に軽減し、システム全体のコストダウンにもつながる。
スマートフォンなどを活用した遠隔モニタリングも可能だ。維持管理の効率化だけでなく、各世帯の水使用データも可視化し、高度化したシステムや柔軟な料金プログラムも自治体ごとに導入できる。
2023年8月には、東京都の離島や愛媛県の個人宅に分散型システムを実装し、実証実験を開始。自治体、日本政策投資銀行、ソフトバンクなどと連携し、財政問題解決に向けた取り組みに注力している。
とはいえ、さらなる普及のためには、越えなければならないハードルも多い。ネックとなるのは、やはり自治体ごとの予算や人材が不足している点だ。
そのため、前田氏は金融機関や地域企業と連携し、「Water 2040 Fund―分散型水循環システム導入ファンド―」を創設した。財政負担の平準化に加え、WOTA独自の分析ツールを用いた計画策定や導入後の運用管理体制の構築まで、一貫した伴走型の支援を提供する。
ファンドの予算は100億円規模を予定し、システムの導入に必要な機器代、設置工事費という初期コストを拠出し、自治体や住民の負担を軽減する方針だ。WOTAは、ファンドを活用したシステム導入のサポートを希望する自治体を対象に、2025年7月8日からエントリーを受付し、全国で最大5000世帯の応募を募っている。
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