建機を遠隔で操作すると、結果的に現場の作業員が少なくて済む。EARTHBRAINはさらに進め、「無人化施工ソリューション」という思想で開発を進めているという。現場を無人化すれば対人の事故は発生しない。
大場氏は、無人化施工のポイントとして、無人化に向けた施工計画の作成が必要と説く。「重要なのは、施工計画を作る段階から無人化施工をどう導入したらいいのか、どう使ったらいいかを適切に考えること」(大場氏)。
当然だが、現場の作業員だけをゼロにしても意味はない。大場氏は「現場無人化と言いながらも、コンピュータに向かっている作業員が10人、20人いるなら省人化にならない」とし、工事に関わる総人員を減らすことが大切と強調した。また、開発中のシステムとして、大型画面や建機の操作系などで構成される遠隔システムのイメージを表示した。システムは、施工計画の作成から施工管理、無人化施工の指示などを究極的には1人で完結することを目指して開発を進めている。
コマツが取り組むスマートコンストラクションは、施工全体をデジタルで管理する。3Dモデルを活用した効率的な施工計画の検討、それに付随する各種課題に対応したツール群も用意している。大場氏は「基本的にはスマートコンストラクションで施工計画を作り、そのまま無人化施工につないでいくシステムを考えている」と全体のシステムを説明した。
無人化施工ソリューションの例として、河川工事の各ステップ(測量、土量計算、切土/盛土の最適化、仮設道路の検討、工程表作成など)のデジタル化手法を紹介した。
遠隔による無人化施工と同様に、現場の工事を大きく変えるのが自動化の技術だ。大場氏は、工事の自動化の方向性には3つのレベルがあるという。
レベル1は「マシンコントロール」の進化だ。これは設計面や設定位置に対する自動化で、建機側のシステムが大きな役割を果たす。コマツは、マシンガイダンスに対応した初のSDV建機「PC200i-12」を発表した。PC200i-12はソフトウェアの更新で、機能を日々強化できる建機で、レベル1が実現する。
レベル2は「自律制御」だ。建機に搭載したセンサーやカメラなどで周辺を認識し、そのデータを制御に活用する。ダンプに土を積み込む作業が自動で行えるようになったり、掘削や撒土などの作業も自動化できたりするようになる。
レベル3は「自動化(最適化)」で、建機の複合的な連携や作業手順の構築が含まれる。大場氏は「レベル3が1番、生産性を左右する。難しくて奥が深いが、生産性が劇的に変わる可能性がある」と語る。
AIは、レベル1〜3の各レベルを進める上で重要な技術だ。特に強化学習から生み出される施工の方法や手順は、効率化を一気に高められる。
AIは作業効率化の他、安全確保にも変化をもたらす。EARTHBRAINからは、過去の事故事例から作業の危険予知やリスク分析、対策などを提起するアプリケーションがリリースされている。
無人化施工は現場の情報をデジタルで管理するため、ダンプや建機の動きや走行ルートを事前に把握できる。安全施工のためのルールをシステムで統合管理すれば、より安全性の高い施工計画の提案も可能になる。大場氏は実現には、「標準化やエコシステムの設計も不可欠だ」と付け加えた。
大場氏は、別の切り口としてヒューマノイド(人型のロボット)の可能性にも言及した。遠隔化や自動化に対する現在の研究/開発は、建機やダンプなどに多数のセンサーやカメラなどを搭載しデジタル化する方向で進んでいる。しかし、ヒューマノイドであれば、現在使っている建機やダンプをそのまま使い、遠隔化や自動化ができるかもしれない。大場氏は「いろいろな可能性があるので、新しい技術はとにかく使ってみる」とし、積極的に開発を進める姿勢を示した。
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