一般的に「Non Energy Benefits(NEBs)」とは、節電や環境配慮型製品の購入など、低炭素に寄与する環境行動をした場合の行動に対する評価基準の一つです。環境行動の効果は、エネルギーの減少に伴うCO2排出の削減量を評価する「Energy Benefit」と、それ以外の効果を図る「Non Energy Benefit(NEB)」で評価されます。環境省によると、Non Energy Benefitは、生活の質の向上や精神面での豊かさなど、これまで図ることができなかった効果を計測し、評価しようとする指標とされています(※環境省「NEBとは」)。
本取り組みでは、省エネ建築物で複数存在するNEBをNon Energy Benefits(NEBs:ネブズ)と定義し、主にオフィスビルの新築や改修の効果測定を念頭に評価指標の開発を行いました。
評価指標の策定に当たっては、オフィスビルのユーザーである従業員や企業、消費者などの顧客、政府/自治体、地域社会、金融機関や株主/投資家、NPOやNGOといったステークホルダーに省エネ建築物がもたらす効果について網羅的に洗い出しました。加えて、国内外の既存調査に照らして妥当性の検証を行い、省エネビルの新築や改修に伴う効果項目として12の効果を定義しました(図3)。
NEBs評価指標の算出式は、各評価指標がどのような財務的影響をもたらすか、省エネ建築物の新築や改修の施策と紐(ひも)付け、国内外の既存研究などを調査の上、項目を洗い出して整理し、構築しています。算定ロジックについては、基本的なビルのスペックや運用状況といった既存のデータでの算出が可能な形で作成しました。
例えば、項番2「知的生産性」の場合、省エネ化施策で断熱性が向上することで快適な温熱環境が実現され、従業員の知的生産性の向上が期待されます。
評価指標は、社内データ(施設設備に関する情報、従業員に関する情報など)や社員へのアンケートから得られた情報、施設設備の利用状況の確認や従業員へのヒアリング実施により、NEBsの数値を実態に合うように精緻化を行うことも可能であり、実物件での検証も進めています。
実際の建物での算定結果や取り組み内容については、次回以降にお伝えする予定です。
現在発表している定量化ロジックは、自社所有の事務所ビルを対象にした指標、テナントビルのオーナー、テナントそれぞれを対象とした指標となっていますが、今後は商業施設や公共施設などの他の建物用途を対象に算定可能な指標を作成することで、より多くの建物でNEBsの可視化を行っていきます。
取り組みを通じて、ZEBをはじめとする省エネ建築物の採用促進を通じたカーボンニュートラルの貢献はもちろん、従業員のウェルビーイングの向上、Scope3のCO2排出量削減にも貢献することを目指し、幅広いステークホルダーと連携して地域社会全体での脱炭素化を推進していきたいと考えています。
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