NTTファシリティーズとデロイトが開発、総合的な評価指標「NEBs」とは何か?【新連載】NTTファシリティーズの省エネビル指標「NEBs」(1)(1/2 ページ)

NTTファシリティーズとデロイト トーマツが提案する新しい評価指標「NEBs」は、省エネ建築物の経済効果を総合的に評価し、投資対効果を適正に捉えた意思決定を支援するものです。NEBsによる評価が進むことが、ZEBの普及を促進し、カーボンニュートラルの達成や従業員のウェルビーイング向上、企業価値の最大化にもつながります。本稿では、NEBsの指標開発に取り組んだ背景とその考え方、評価方法について解説します。

» 2025年04月22日 10時00分 公開

建築物省エネ化の背景と国内建築物の課題

 2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建築物の消費エネルギーの削減が喫緊の課題となる中、エネルギー消費を実質的にゼロにするZEBをはじめとした省エネ建築物の普及が求められています。

 環境性能に優れた建物は、オフィス環境の改善による従業員の健康増進や知的生産性の向上、さらにはエンゲージメント向上に伴う離職率の低下など、多くの副次/間接/相乗的な効果が見込めます。一方で、こうした環境性能に優れた建物の費用対効果は、CO2削減量やエネルギー削減量で評価されることが多く、その効果は限定的なため、結果として省エネ建築物導入の意思決定がなかなか進まないという現状がありました。

 近年、社会課題へのインパクト創出とファイナンシャルリターン達成を同時に実現するインパクト投資の考え方、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営の考え方が広まっており、エネルギー削減だけではない省エネ建築物の副次/間接/相乗的な効果に大きな注目が集まっています。

 こうした背景から、ZEBプランナーとして長年ZEBの設計・監理を手掛けてきたNTTファシリティーズと、カーボンニュートラルの包括支援の経験やオフィスビルで働く従業員のウェルビーイングに関する知見が豊富なデロイト トーマツは、その知見を生かして2023年4月から、省エネ建築物のエネルギー・光熱費削減以外の効果の定量評価手法の開発に取り組んでいます。

 本評価指標を用いることで、省エネ建築物の新築や改修の効果を総合的に金額換算で評価することが可能となり、投資対効果の適切な評価の実現を目指しています(図1)。

図1 本取り組みで目指す姿 図1 本取り組みで目指す姿 提供:NTTファシリティーズ
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.