西松建設とコンクリートコーリングは、既設床版の撤去を高速化する「自動水圧制御システム」を開発した。従来工法と比較して床版撤去にかかる作業時間を約15%短縮する。
西松建設は2025年2月21日、コンクリートコーリングと共同で、既設床版の撤去を高速化する「自動水圧制御システム」を開発し、実大供試体による施工速度などの検証を行ったと発表した。従来工法と比べて切断後の主桁(げた)部の残コンクリートを約40%削減し、主桁上のはつり作業を低減したことで、床版撤去にかかる作業時間を約15%短縮できた。
全国各地の高速道路リニューアル工事では橋梁(きょうりょう)床版の取替工事が行われている。その施工サイクルの中で多くの時間を要するのが既設床版の撤去作業で、施工の効率化や高速化が課題となっている。西松建設はこれまで、合成桁形式の急速撤去工法として「板ジャッキ」使用した切断撤去技術の開発に取り組んできた。
今回開発した自動水圧制御システムは、4分岐の水圧制御ユニット2台から成る。ユニットは水圧ポンプと板ジャッキの間に配置。分岐部に水圧の減圧を検知した際にバルブを閉める電磁弁を設け、ひび割れが発生すると送水を自動停止する。全てのバルブを閉じたことを検知後、自動でバルブを全開放し再送水するプログラムを構築。これにより、床版と主桁を均等にリフトアップ/破断する。ユニット操作は別途開発したタッチ式操作盤で行う。施工場所から最大30メートル離れた位置からも操作可能だ。
西松建設は開発した各技術の性能を検証するため、主桁を含めた模擬合成桁床版を製作し、実際に板ジャッキを使用して床版と主桁間の実大切断実験を実施した。
製作した模擬床版は2桁間の合成I桁床版で、床版厚170ミリ、橋軸方向4.9メートル、主桁間隔3.2メートル。床版と主桁の接合には馬蹄形ジベル筋を350ミリ間隔で配置し、床版の撤去ブロック長は実施工での撤去延長と同等の2.45メートルとした。
実験では、模擬床版を主桁と分離させるため、板ジャッキを8枚同時に使用。水圧制御ユニット導入により、破断状況を制御し、主桁や板ジャッキに不具合を与えることなく破断できた。作業人数は導入前の5人から2人(桁下の監視なし)に削減でき、省人化を実現した。
今後は板ジャッキを使用した切断撤去技術を実際の床版取替工事に適用し、高速施工化や車線規制の早期解除を実現するための技術開発をさらに推進する。
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