西松建設とコンクリートコーリングは、特殊鋼板を加工した「板ジャッキ」を用いて短時間で合成桁床版を撤去する方法を開発した。床版の撤去にかかる時間を短縮できる。
西松建設は2024年3月4日、コンクリート撤去などの専門工事を手掛けるコンクリートコーリングと、「板ジャッキ」を活用した床版切断撤去技術を開発したと発表した。合成桁(けた)形式の床版取替工事で、撤去時間を最大50%短縮する。
開発した床版切断撤去技術は、特殊鋼板を袋状に溶接した部材「板ジャッキ」を使用する。引張力に弱いというコンクリートの特性を踏まえ、板ジャッキに5MPa(メガパスカル)程度の小さな水圧を作用させ、膨張によりコンクリートを破断する仕組みだ。
板ジャッキのサイズは、標準寸法100×10センチ、板厚2.4ミリとコンパクト。重さも2.2キロと軽く、限られた施工空間でも作業が可能だ。使用機材はカッター(道路カッター、ウォールソー)、水圧ポンプ、板ジャッキなどで、狭い場所でも簡単に設置、撤去できる。
使用方法はまず、既設床版のハンチ部や上面にカッターなどで切断したスリットに、板ジャッキを挿入する。専用ポンプで板ジャッキに水圧を作用させ、スリットを拡張/延伸させることで、必要な箇所にコンクリートの破断が生じる。その後、分離した床版をクレーンで撤去する。
既設床版(鈑桁、箱桁)の形状や配筋状況などをもとに、適切なスリットの方向/深さ、板ジャッキ加圧順序を設定することで、効率的な破断が可能だ。また、これまでの方法よりも騒音や振動の発生時間が短く、周辺住環境への影響は少ない。さらに、プレス機を用いることで、拡張した板ジャッキをもとの形に戻せるため、複数回の使用が可能だ。
西松建設とコンクリートコーリングは、板ジャッキによる床版切断方法の適用性の検証として、鈑桁と箱桁の2種類の模擬合成床版を製作し切断実験を実施した。
鈑桁床版(床版厚220ミリ、橋軸直角方向幅880ミリ、橋軸方向延長4メートル)を製作し、床版と主桁の接合に馬蹄形ジベル筋を300ミリ間隔で配置して、板ジャッキを用いた試験を実施したところ、割裂が床版の鉄筋に沿って発生し、主桁上に残存するコンクリートを30%に低減できることが分かった。
また、箱桁床版(床版厚280〜400ミリ、橋軸直角方向幅4メートル、橋軸方向延長4メートル、横断勾配3.1%)を製作し、馬蹄形ジベル筋を床版両端部に300ミリ間隔で配置した。板ジャッキの使用順序を床版中央、ジベル筋付近として加圧することで、迅速に床版を剥離/破断できることを確認。一般的なブレーカによる撤去方法に比べて、施工時間を50%短縮した。
西松建設は今回開発した「板ジャッキ」工法の実験結果をもとに改良を行い、実施工を想定した実大実験を実施するなど、今後も工法の実用化に向けた技術開発を進める。
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