鹿島建設、SolidSurface、日新システムズは、羽田イノベーションシティで到達範囲の広い電波規格「Wi-SUN FAN」を活用したロボット遠隔誘導の実証実験を行い、電波の途切れにより生じるロボットのコントロール不能時間を短縮することに成功した。
鹿島建設、SolidSurface、日新システムズは2025年1月22日、羽田空港に隣接した大規模複合施設「羽田イノベーションシティ(HICity)」で、到達範囲の広い電波規格「Wi-SUN FAN」を活用したロボット遠隔誘導の実証実験に成功したと発表した。
3社はこれまでHICityで、配膳や荷物運搬などのサービスにおける人手不足への対策として、ロボット遠隔誘導に関する実証実験に取り組んできた。従来の4GやWi-Fiの通信では、壁など障害物により建物の最奥部やエレベーター内に電波が届かず、ロボットが一時的にコントロール不能となる課題があった。
Wi-SUN FAN(Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profile)は電波の到達距離が最長1キロに達し、複数の中継器間で網目状のネットワークを構築できる特徴を持つ。実証では、Wi-SUN FANをSolidSurfaceが開発した決済機能付配送ロボット「PayCarGo(ペイカーゴ)」に搭載し、通信が途絶える場所での補助手段として活用。その結果、実証フィールドの場所に関わらず、電波の途切れで生じるコントロール不能時間が大幅に減少した。
実証実験において、鹿島建設はロボットの統合管制システムとロボットインシデント管理システムの開発を担当。
日新システムズは、京都大学 原田研究室と共同で研究/実用化を行ったWi-SUN FANの通信パラメータの調整で技術協力を行い、基地局切り替え時の通信不能時間を最小化することで、通信の連続性を確保することに成功した。
SolidSurfaceは、鹿島建設のロボット統合管制システム/ロボットインシデント管理システムについて、4GだけでなくWi-SUN FANでも連携可能にしたエッジコンピュータ処理を行い、PayCarGoに搭載した。
2024年度中には、伝送速度と伝送距離を向上した新バージョンのWi-SUN FANがリリースされる予定で、今後新バージョンを使用した実証実験を改めて実施。HICity全体をオープンな実証フィールドとして活用するためのネットワークプラットフォーム構築を目指す。また、新たな参画企業を募り、より広範な実証実験と技術開発を進める方針だ。
HICityは、鹿島建設など9社が共同出資する「羽田みらい開発」が事業を推進する施設で、先端産業と文化産業をコンセプトに、社会課題の解決に向けた技術のテストベッドとして運営されている。また、鹿島建設、Solid Surface、日新システムズが参画する「羽田空港第1ゾーンスマートシティ推進協議会」の活動拠点として、さまざまな実証実験を実施している。
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