鹿島建設は建設機械の自動運転を核とした自動化施工システム「A4CSEL」について、造施工事への本格適用を開始した。
鹿島建設は2024年12月24日、建設機械の自動運転を核とした自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」について、新たに「自動振動ローラ用施工計画システム」を開発し、造施工事への本格適用を開始したと発表した。ダム工事で培った技術を造成工事特有の条件や制約にも対応させ、「現場の工場化」を進める。
A4CSELは施工マネジメントシステムと自律自動運転システムで構成。最適化された施工計画に基づいて複数の機械の連携作業を自動で行うことで、効率よく安全に工事が進められる。これまでは主にダム工事で導入してきた。
2020年度にA4CSELを導入した秋田県東成瀬村「成瀬ダム堤体打設工事」では、最大で3機種14台の自動化建設機械を3〜4人のITパイロット(管制員)で稼働。2022年10月には、月間打設量の日本記録を62年ぶりに更新している。
今後、他工種への展開を進めるためにシステム開発を継続しており、今回、約63ヘクタールの敷地に工業団地とスマートインターチェンジなどを整備する愛知県岡崎市の「岡崎市阿知和地区工業団地造成事業」に、自動化改造した振動ローラ2台を導入し、稼働を開始した。
造成工事では、ダム工事と類似の作業でも、工事進捗や場所ごとに変化する現場条件に対応する必要がある。そこで鹿島建設では、造成工事の盛土作業を対象に、振動ローラに特化した自動運転の開発を開始。実現場で運用しながら技術的課題を解決し、汎用性の高いシステムへと改善を進めていくこととした。
今回開発した自動振動ローラ用施工計画システムは、作業エリアなど毎日変化する現場条件に合わせて最適な施工計画を自動で作成し、複雑な地形(盛土形状)や高低差(排水勾配)に対応する。データが重機管理システムと自動運転プログラムへと流れることで、計画から施工まで一気通貫で行える。
具体的には、まず、CADで作成した計画平面図から、ユーザーが指定した自動振動ローラで転圧する領域を取得。転圧領域と自動振動ローラの設定値(機体固有の情報と自動転圧作業に関する情報)を基に、実作業場所を生成する。作業場所のデータを重機管理システムに送信すると、経路と軌道を自動生成し、自動運転プログラムへ指令を送信。これを受け、自動振動ローラが自律自動運転で作業開始する。
従来の施工計画システムと比較して、複雑な形状に合わせた走行作業レーン割が可能になり、2台の自動振動ローラがそれぞれの位置を把握して安全で無駄のない施工を行えるようになった。
鹿島は今後、造成工事におけるA4CSELの普及展開を図るため、現場の規模や使用条件に応じて柔軟に対応できる汎用性の高いシステムに深化させるとともに、機種も増やす。管制業務についても、これまでの現場に設置する「現地管制室」、神奈川県小田原市の鹿島西湘実験フィールドの「遠隔管制室」に加えて、「移動管制室」を新たに整備することで働き方の提案も進める。
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