スーゼネ5社とブリヂストン、オイレス工業が「免震装置」のBIMモデル共通化 構造設計でなぜ標準化が必要か?BIM(2/3 ページ)

» 2024年09月04日 08時19分 公開
[石原忍BUILT]

“入れ子構成”のファミリで度重なる設計変更でも対応可能に

大林組 設計本部 構造設計部 担当課長 藁科誠氏 大林組 設計本部 構造設計部 担当課長 藁科誠氏 筆者撮影

 説明会で大林組 設計本部 構造設計部 担当課長 藁科誠氏は、BIM Summit構造分科会を代表して免震装置のファミリを共通化する意図について解説した。

 免震装置は薄いゴムと鉄板(鋼板)を交互に重ねた構造で、建物の下部などに配置して、地震による激しい揺れをゆっくりした揺れに変える機能やエネルギーを吸収する機能がある。

 一般的に免震装置のファミリは、設計者自身がメーカーからカタログやCADデータを取り寄せ、自前で作成している。仮にメーカー提供のファミリがあっても、設計符号や型番の選択、配置の方法などの情報が不足していたり、設計者の利用方法に合致していなかったり、設計フローに合う使い方ができなかった。藁科氏は「設計初期に製品の型番を特定できないので、メーカーから製品のファミリを提供されても、そのままでは使えない」と説明する。

免震装置のイメージ図 免震装置のイメージ図 提供:オートデスク

 その解決策として、免震装置のメーカー2社も参加した共通化では、親と子の“入れ子構成”のファミリとした。親ファミリ(ホストファミリ)は設計者が編集し、符号や型番、配置レベルなどの情報を持ち、子ファミリ(ネストされたファミリ)はメーカーが作成し、ゴム径やせん断弾性係数など装置の詳細情報を保持している。入れ子構成の利点は、「設計の初期段階で装置を選定できなくとも、親ファミリだけを配置しておけば、後で検討する際に子ファミリの型番を入れ替るだけで済む」(藁科氏)。

入れ子の構成のファミリ 入れ子の構成のファミリ 提供:オートデスク

 今後の分科会では、免震装置のファミリで「弾性滑り支承」に加え、「オイルダンパー」「制震ブレース」も順次公開していく。対外的には「日本建築構造技術者協会やBIMライブラリ技術研究組合、buildingSMART Japanなどの構造系BIMを検討している業界団体に提案するとともに、設計事務所や建設会社にも利用を働きかけていく」(藁科氏)。

BIM Summit構造分科会のメンバー BIM Summit構造分科会のメンバー 筆者撮影

人とコンピュータの共通言語となるBIMに必要なのはデータ共通化

オートデスク 技術営業本部 AECソリューションエンジニア 林弘倫氏 オートデスク 技術営業本部 AECソリューションエンジニア 林弘倫氏 筆者撮影

 説明会では、オートデスク 技術営業本部 AECソリューションエンジニア 林弘倫氏も、構造設計をバックアップするRevitをはじめとするAutodeskのソリューション群「AEC Collection」を紹介した。

 AEC Collectionのコンセプトでは、図面を見れば関係者間で建物情報を共有できるように、BIMも人とコンピュータが同じ建物をイメージするための“共通言語”と位置付けている。BIMの共通データとしては国際規格のファイル形式「IFC」があるが、林氏は「意匠・構造・設備のデータやりとりでは、それぞれのBIMや設備CADで手戻りがたびたび発生し、修正の際に中間ファイルへのデータ変換の手間やデータ欠落の恐れが出てくる。その点、設計BIMデータのパラメータが共通化されたRevitであれば、整合性を担保した一意性のある(=Single Source of Truth)データ連携がRevitだけで完結する。そのためにはBIM Summit構造分科会の取り組みのように、もとになる床や柱、壁などのパーツの標準化も求められる」と説明する。

BIMは建物情報のSingle Source of Truth。Revitであればシームレスかつ一元的に連携が可能 BIMは建物情報のSingle Source of Truth。Revitであればシームレスかつ一元的に連携が可能 提供:オートデスク

 意匠・構造・設備の設計BIM連携に向け、オートデスクでは日本仕様のサンプルで2020年に、大手ゼネコン5社と制作した鉄骨造7階建てオフィスビルの意匠・構造・設備の3モデルを公開。2023年6月には日本設計と都市再生機構(UR)との共同研究で、集合住宅で初のBIMガイドラインを策定し、UR賃貸住宅の意匠・構造・設備のBIMデータもリリースした。

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