機体が壁にくっついて点検 神戸高専や徳島大院の技術を用いた菱田技研工業の“壁面吸着ドローン”Japan Drone 2024(2/2 ページ)

» 2024年08月15日 08時52分 公開
[川本鉄馬BUILT]
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特殊な吸着パッドと吸着時の姿勢制御は産学連携の技術

 ALBATOROSSは、機体を壁に密着させるために高度な技術を用いている。壁に吸着させるためのパッド(グリッパ)は、神戸市立工業高等専門学校(神戸高専) 准教授 清水俊彦氏が研究する「吸い付けることでモノをつかんだり持ち上げたりする技術」を応用している。

 親機には、直径20センチほどのグリッパを左右に2個装着。真空ポンプで空気を吸い込み、グリッパ2個で重量15キロの親機本体と8キロの子機を壁に吸着したまま保持できる。

親機に搭載されたグリッパ。真空ポンプで壁に強力吸着できる 親機に搭載されたグリッパ。真空ポンプで壁に強力吸着できる

 親機は、壁に吸着するときの姿勢調整にも高精度な制御が必要で、開発にあたり徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 准教授 三輪昌史氏の協力を得た。

 ドローンは通常、プロペラの軸を傾けることで前進/後進するので、機体も傾いて移動していることになる。しかし、壁の吸着では、できるだけドローンを傾けずに接触する必要があった。

 そこでALBATOROSSは、モーター軸の傾きを制御し、ドローンの姿勢を保ったまま壁に貼り付かせるために、三輪氏の研究している「チルト制御」を採用した。チルト制御は、菱田技研工業の上空から狙った場所に横向きに水を撒(ま)く散水ドローンでも使われている。

機体を壁面に吸着させるために必要なローターの回転軸を傾けるチルト機構 機体を壁面に吸着させるために必要なローターの回転軸を傾けるチルト機構

 吸着グリッパとチルト制御のテクノロジーは、それぞれが特許を取得している。ALBATOROSSはユニークなドローンだが、確かな技術に裏打ちされて“壁面吸着”を実現しているといえるだろう。

ALBATOROSSを紹介した菱田技研工業の菱田大氏 ALBATOROSSを紹介した菱田技研工業の菱田大氏
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