大林組は、ステレオカメラの画像データと生成した点群データを活用したAI自動計測技術により、計測精度と作業効率を向上する配筋自動検査システムを開発した。配筋検査業務の作業時間を現状と比較して約36%縮減する。
大林組は2024年5月21日、立体写真撮影用の「ステレオカメラ」の画像データと生成した点群データを活用し、AI自動計測技術により計測精度と作業効率を向上した配筋自動検査システムを開発したと発表した。熟練度によらない効率的な検査を実現し、配筋検査業務の延べ作業時間を、現在使用している専用検査システムと比較して約36%縮減する。
新システムでは、AIによる推定結果を、確度が高い場合は青、低い場合は橙と、色分けで可視化する。実証ではAIが「推定確度が高い(青)」と回答した比率は91.5%、そのうち正答率は98.6%で、「推定確度が低い(橙)」を含む全体の正答率は94.0%だった。推定確度を可視化することで、施工管理者による再確認の指標となり、再確認にかかる作業時間も短縮できる。
ステレオカメラは対象物を2つのカメラで同時に撮影し、奥行き方向の情報も記録する。ワンショットではなく連続的に動画撮影して視点を動かすことで、奥に隠れた物体も検知できるのが特徴だ。
新システムは、配筋を動画撮影するステレオカメラを搭載した検査パッケージと、計算用サーバ、タブレット端末から成る。配筋を動画で撮影し、切り出した画像データと計算用サーバで生成した点群データを基に、鉄筋径やピッチをAIで自動計測する。
動画撮影で視点を移動させることで、背面の鉄筋も捉えることができ、1回で多段配筋の検査が可能だ。また、鉄筋と背景の境界認識技術の強化により、現場の明るさの変化や複雑な配筋状況にも対応する。実証では、約1メートル奥に配置された配筋でも正確に計測できることを確認した。鉄筋の最外部からコンクリート表面までの長さを示す「かぶり厚さ」についても、任意の撮影方向から自動計測できる。
計測結果はタブレット端末から、Webアプリ上でBIMの設計情報と照合し、最終的には施工管理者が合否判定を行う。BIMデータを使用するため検査前のデータ作成を簡略化でき、検査結果は帳票として自動作成される。
今後は新システムを自主検査に適用し、実績を蓄積する。さらなる高精度化を目指し、AIによる推定精度の向上、ステレオカメラやタブレット端末の小型/軽量化、検査報告書の自動作成機能など機能向上にも取り組む。自社利用だけでなく、新システムの販売や、配筋検査業務をサービスとして外販することも検討中だ。
なお、今回開発したシステムは、2018年に大林組のオープンイノベーションによる研究開発拠点であるシリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリ(SVVL)で、米国スタートアップ企業や研究機関とともに開発した次世代の自動品質検査システムがベースになっている。
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