新たな芽をいつか森に、清水建設がイノベーション拠点でゼネコンの枠を超えて目指す姿温故創新の森「NOVARE」探訪(前編)(2/5 ページ)

» 2024年05月27日 07時00分 公開
[三島一孝BUILT]

イノベーションのプロセスに合わせた空間を作るNOVARE Hub

 NOVAREの5つの施設の内、イノベーションの創出に大きな役割を果たすと期待されているのが、NOVARE Hubだ。NOVARE Hubは空間そのものがイノベーションを生み出すために最適な実践の場となっている。具体的には、イノベーションのプロセスである「課題の発見(Discover)」「仮説の立案(Define)」「検証と実践(Refine)」「社会実装(Scale)」に沿った形で施設が構築されていることが特徴だ。

NOVARE Hubはイノベーションのプロセスに合わせた施設環境を用意 NOVARE Hubはイノベーションのプロセスに合わせた施設環境を用意 出典:清水建設資料

 例えば、課題の発見や仮設の立案などについては、関係者のヒアリングやディスカッションが重要になるため、多拠点会議システムなどを備えたミーティングルームなどを用意。さらに、自由な視点でメンバーなどを入れ替えながらの議論ができるように、移動式家具やPoE照明、各種無線通信、個別空調などの完全レイアウトフリー環境を実現している。

NOVARE Hubの様子。自由な議論が行える環境を用意する NOVARE Hubの内観。自由な議論が行える環境を用意している。また、NOVARE Hubでは建設資材などの廃材をアップサイクルで利用した椅子やテーブルが使用されている

 そもそも、現在の座席を共用する「フリーアドレス」は1987年3月に清水建設の技術研究所で世界で初めて実現されたとしており、NOVAREではさらにその先の「ノーアドレス」を目指しているという。そのため、人だけでなくモノにもサイバー空間上のアドレスを与え、これらを個別制御することで、フィジカル空間上のどの場所にいても個別最適化が可能な環境を創り出した。例えば、照明はPoE照明を採用し建物全体を1つのネットワークでつなぎ一元制御を行うことができる。さらに、空調は「ピクセルフロー」とする超個別空調システムを採用した。タグによる個人の位置情報を特定し、個別制御するファンによりその範囲に最適な温熱環境を実現する。

「ノーアドレス」のオフィスには、ピクセルフロー(超個別空調システム)を配置家具には建設用廃材をアップサイクルしたテーブルやいすが使用されている (左)「ノーアドレス」のオフィスには、ピクセルフロー(超個別空調システム)を配置。「ノーアドレス」のオフィスには、ピクセルフロー(超個別空調システム)を配置。(右)家具には建設用廃材をアップサイクルしたテーブルやいすが使用されている
NOVARE Hubの天井架構には伝統継手の「金輪継ぎ」を採用大型の講演スペースなども用意されている (左)NOVARE Hubの天井架構には伝統継手の「金輪継ぎ」を採用。(右)大型の講演スペースなども用意されている

 清水建設 NOVARE DXエヴァンジェリストの及川洋光氏は「NOVAREでさまざまなイノベーションを生み出していける施設とするだけでなく、清水建設として新たな空間の創出につながるさまざまな技術を盛り込んでいることが特徴だ。清水建設としてのイノベーションに貢献するだけでなく、新たな技術の発信や体験できる施設として、将来の空間の価値をパートナーと一緒に探求していく」と述べている。

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