日産のEV中古バッテリーを現場用発電機の代わりに 建機給電で道路舗装も切断産業動向

第一カッターとブルースカイテクノロジーは、可搬式蓄電池のプロトタイプを共同開発した。EVのリユースバッテリーを用い、パワーコンディショナーで道路舗装を切断する電動建設機械などを駆動できる。

» 2024年04月19日 08時00分 公開
[BUILT]

 第一カッターは2024年4月10日、ブルースカイテクノロジーと共同で、「可搬式蓄電池」の代わりとなる可搬式蓄電池のプロトタイプを開発したと発表した。

日産LEAFのリユースバッテリーパック2個を電源に転用

 プロトタイプは、日産のEV(電気自動車)「LEAF(リーフ)」で使っているリユースバッテリーパック2個を電源としている。最大27kVA(キロボルトアンペア)の電力を入出力可能なパワーコンディショナーで、工事現場の電動建設機械を駆動できる。蓄電池を用いることで、従来の軽油利用の発電機と比較すると温室効果ガスは約2分1に抑えられる。

開発した可搬式蓄電池 開発した可搬式蓄電池 出典:第一カッタープレスリリース

 また、太陽光発電由来の電気をパワーコンディショナーから分岐して給電することも可能だ。定格容量は15.6kwh×2式で、試算によると、一般家庭(4人世帯のマンション居住)消費電力量3日分に相当し、動力用3相200Vで満充電まで約6時間。1時間当たりの温室効果ガス排出量は、軽油利用時で13.26kg-CO2、系統電源利用時で6.75kg-CO2、太陽光パネル経由時で0kg-CO2となる(蓄電池運搬や製品製造時の排出量は含まない)。

システム構成図(赤枠内がシステム構成範囲) システム構成図(赤枠内がシステム構成範囲) 出典:第一カッタープレスリリース

 開発の背景には、第一カッター興業が請け負う現場では、フラットソーイング工法(床、床版、舗装のような水平面を切断できる工法)やコアドリリング工法(配管、フェンス、ガードレール設置などの孔あけに使用される工法)を採用しており、使用する機械はガソリンエンジンやディーゼルエンジンが出力元となっていることがある。機械は専門性の高さや使用用途が限定されているため、一般的な建設機械と比較すると、市場流通量は圧倒的に少ない。

フラットソーイング工法 フラットソーイング工法 出典:第一カッタープレスリリース

 そのため、利用している機械の電動化や燃費向上などの取り組みで、既存の機械メーカーの開発や他の業種からの参入を待つだけでは、取引先の脱炭素化に迅速に対応することは難しいと判断し、パートナー企業と主導して脱炭素に向けた研究開発を開始した。その取り組みの一環で、軽油を燃料とする可搬式発電機の電動化を考え、ブルースカイテクノロジー社との可搬式蓄電池の開発に至ったという。

 今後は、太陽光発電システムを使用している営業先や顧客先で給電し、試験的に現場で稼働させる計画だ。

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