大林組は、東名リニューアル工事で活用する施工シミュレーターに、最適な施工サイクルの提案機能と、リスクを可視化する機能を追加し、運用を開始した。現場の作業効率向上や労働災害の防止につなげる。
大林組は2024年3月22日、トヨタ自動車未来創生センターと共同開発した施工シミュレーター「GEN-VIR(ゲンバー )」に、最適な施工サイクルの提案機能と、リスクを可視化する機能を追加したと発表した。新機能は東名リニューアル工事で活用し、工事現場の作業効率を向上して高速道路利用者への影響を最小限に留めるとともに、労働災害の防止も図る。
2024年度には複数の現場にGEN-VIRを導入し、効率的かつ安全な建設現場を構築する考えだ。
大林組は、東名高速道路多摩川橋において、老朽化した高速道路コンクリート床版を新たな床版に取り換える工事を手掛けている。工期は2021年11月〜2024年11月下旬までの約3年間。工期や交通規制など、高速道路利用者への影響を最小限に抑えることが求められる一方で、限られた作業ヤード内では、大型車両の待機場所の確保や車両入退場に伴う作業員の待機時間の発生など、施工効率に関わる課題を抱えていた。
実装された追加機能のうち、最適な施工サイクルの提案機能では、作業員の行動を記録/分析し、理論上最適な施工サイクルを算出し提案する。また、リスクの見える化機能では、作業中の動作に起因する労働災害や第三者災害などのリスクを分析しバーチャル現場内に表示する。
リニューアル工事では従来、高速道路上の作業ヤード内(全長495メートル)に施工エリアを4カ所設け、4班体制で施工していた。GEN-VIRによるシミュレーション結果をもとに、1エリア当たりの施工面積を拡大し、複数台の工事車両の待機場所を確保する3班体制に切り替えた。その結果、車両の入退場回数と作業員の待機時間削減を実現。車両入退場の回数は、4班体制時の32回から12回まで低減した。当初の施工計画に比べて1日当たりの施工時間は3時間20分(約17%)短縮した。
また、同工事では同じ施工サイクルを繰り返し行う。GEN-VIRの新機能を活用して理論上の最適な施工サイクルの検討や作業員の移動や休憩時間などの行動を記録/分析した結果、作業員ごとに休憩時間のばらつきがあることや、作業工程の理解度や作業の熟練度に違いがあることが明らかになった。
これらの要因を施工計画に反映させることで、施工サイクルの改善につなげた。さらに、トヨタ自動車の「かんばん方式」を参考に、現場作業員に色付きビブスの着用を実施し、より効率的な施工サイクルを実現できる体制を構築した。
また、GEN-VIRはバーチャル現場内に作業上のリスクを表示、分析する機能を備えている。作業前の安全教育に利用することで、作業員全員がリスクを共有し、危険に備えた動作確認や、安全対策が行えるようになった。
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