清水建設は、施工中の建物を再現した仮想空間の中に入ることで、遠隔地から建物の諸検査を行えるメタバース検査システムを開発した。3D点群モデルと設計BIMデータを融合させたメタバース空間で、施工中の建物が設計通りか、遠隔検査が可能になる。
清水建設は2024年2月6日、施工中の建物を再現した仮想空間の中に入ることで、遠隔地から建物の諸検査を行えるメタバース検査システムを開発したと発表した。
メタバース検査システムは、日本建築センターの指導と、xR開発などを手掛ける積木製作の協力を得て開発した。建物の3D点群モデルと設計BIMデータを結合させた「メタバース」と、両者の整合を確認できるチェックツール「xRチェッカー」から成る。
メタバースは、クラウド上にある建築確認を受けたBIMデータと、施工中の建物の空間をスキャンした3次元点群データを結合し、構成する。VRゴーグルを着用して、自分の分身である「アバター」としてメタバースに入ることで、制約のないリアルな視野が開ける。コントローラーを操作して建物内や建物周囲の任意の場所へ移動でき、鳥瞰(ちょうかん)などの現実にはない任意の視点からも検査が可能だ。
アバターとして仮想空間に入っている他の関係者と音声会話したり、クラウドからダウンロードした工程写真、各種検査報告書などの書類データを確認したりできる。また、「xRチェッカー」の機能により、BIMデータと点群データとの整合を即座に自動計測し、設定した許容値を超えた差分の色分け表示もできる。
清水建設は2019年6月から、BIMデータを活用した建築確認申請や諸検査に取り組んでいる。既にAR(拡張現実)技術により、遠隔地からタブレットの画面越しに検査できるシステムを開発しているが、視野の制約をなくして臨場感を増すことが課題だった。
メタバース検査システムを開発したことで、居場所を問わず施工中の建物の諸検査に対応できるようになり、建築生産の効率化や検査の効率化/高度化にもつながる。既に、実際の建物を対象にシステムの検証を実施しており、改善点も認められるとしながらも、日本建築センターから「実用に供し得る」という評価を得た。清水建設は将来、同システムを一般公開し、建築生産の効率化に寄与するとしている。
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