西松建設とオックスジャッキは、クレーン作業ができない条件の床版取替工事でフォークリフトに装備する床版作業用の専用治具を開発し、従来よりも短時間で精度よい床版設置作業を可能した。
西松建設とオックスジャッキは2023年11月06日、クレーン作業ができない作業環境でも新設床版設置を効率化させる専用治具を開発したと公表した。
床版取替工事のうち、新設床版の設置は、一般的にはクレーンを使用している。しかし、工事箇所の周辺環境によっては、クレーン作業ができない、もしくはクレーン作業時間が制限される箇所がある。
そこで西松建設は、短時間で精度よく大型フォークリフトを用いて新設床版の運搬や設置を行うことを検討した。新設床版の設置精度は、床版間の継手金物の連結に関する許容値が数ミリとなる場合もある。対応するため、設置する床版位置をリモコン操作で微修正(回転調整(±4.8度)、前後調整(±100ミリ))が可能な「床版作業用治具」を新たに開発した。
新設床版を把持し、揚重する鉛直ジャッキ(ジャッキストローク長850ミリ、上記のリモコンで操作可)は、実施工の新設床版に設置される把持金物数に合わせて8本(油圧制御可能)としている。
実大実験では、床版作業用治具の性能を検証するため、実工事で設置する新設床版と同程度の大きさの模擬床版(橋軸直角方向幅:12.4メートル)を製造するとともに、24トン級の大型フォークリフトに「床版作業用治具」を装備させ、運搬や設置試験を実施した。運搬路は、実工事を想定して、橋軸直角方向角度を約3度として造成した。
検証では、模擬床版を仮想床版設置位置まで運搬後から設置までの時間と設置精度を確認した。床版設置に関する時間については、一般的な手法のクレーンを用いた設置時間と比較した。設置精度については、床版間継手金物を想定し、床版間距離20ミリ、許容値±2ミリ、橋軸直角方向のズレに対する許容値±5ミリとした。
実験の結果、設置精度の許容値(橋軸方向、橋軸直角方向共)内での床版設置に要する時間は平均2分25秒(実験10回の平均、最速時間1分36秒)で、一般的なクレーン作業と同等(実験6回の平均:2分39秒)以下であり、十分な施工性を有することが確認した。
新たに開発したリモコン操作可能な「床版作業用治具」を装備することで、大型フォークリフトによる新設床版の運搬や設置が安全かつ容易に精度よく実施できることが証明された。
今後は、実大実験の結果を精査し、床版作業用治具をより使用性の良い装置となるよう改良を継続する。また、施工条件に制約がある場合でも、安全にかつ高速に床版取替工事が実施できる技術開発を進めていく。
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