2点目は、ワイヤレス接続機能。従来のストラクチャスキャンシリーズは、機体と小型電磁波レーダ「キューブアンテナ」(今回のNX25に相当する機器)を有線で接続していたため、探査範囲に制限があった。Flex NXとNX25は無線接続するため、ケーブル長さに制限されず、探査範囲が大幅に拡大する。
また、Flex NXはスマートフォンなどの端末とも無線接続するので、Flex NXを中継機として活用し、NX25の探査データを表示したFlex NXの画面をミラーリングして、スマートフォンやタブレットで閲覧するという使い方もある。
これにより、1人がNX25を操作し、別の人がタブレットなどでデータを確認したり、あるいは1人の作業員が片手でNX25を操作しながら、もう一方の腕に装着したスマートフォンでデータを確認したりするということも実現する。さらに、「ミラーリングした画面は、Zoomなどを介して遠隔で共有。画面を見ながら遠隔で指示を出すことで、極端な話、現場にいる誰でも探査を行えるようになる」と担当者は話す。まだ実装はしていないが、将来はミラーリングした画面からも操作できるように開発を進めているという。
2点目は、クロススキャン方式の採用。Flex NXには、偏波面の異なる送受信アンテナの通常測定用(前方)と、クロススキャン用(後方)を搭載している。異なる偏波面の電磁波を用いることで、通常の測定用アンテナでは見えづらかった上部筋の下に隠れている下部筋(W筋)や電線管などの埋設物、クラックの判断がしやすくなった(NX25の送受信アンテナは1対。ただ、エンコーダーの向きを変更することで電磁波の偏波面を変更可能)。
もう1つの注目製品は、KEYTECがオリジナル開発し、2023年8月に販売を開始したコンクリート温度センサー「T-BLOCK」だ。
38×38×12ミリの長方形のT-BLOCK本体には、QRコードが印字されている。QRコードを使ってスマートフォンやタブレット端末にダウンロードした専用アプリに機器を登録し、鉄筋スペーサーなどに固定して、コンクリートを打設。打設後には、埋設した登録機器から12メートル以内にスマホやタブレットを近づけると、Bluetoothを介して、コンクリート内部の温度や湿度のデータがリアルタイムでアプリに送られてくる。
また、コンクリート内部の温度データを機器が自動で測定(15分ごと)、打設後おおよそ120日分の記録(約1万2288データ)を保存する。また、積算温度と経過時間から、非破壊でコンクリートの圧縮強度(MPa、N/mm2)を推定するため(マチュリティ法)、強度試験用の供試体も不要になる。本体上部の蓋を外すとセンサーの電源がONになり、適切なタイミングで簡単に電源のON/OFFを切り替えられるため、コンクリートの外部の気温管理用としても使いやすい。
製品紹介担当者は、「既に販売しているコンクリード専用ワイヤレス温度センサーには、多くの現場で活用されている。T-BLOCKは完全国内生産のうえ、従来品よりも操作性や機能が向上しており、多くの需要が見込める」と期待する。
ブースでは上記の2つ以外にも、最新の非破壊技術を搭載した製品が展示されていた。その多くが、高度経済成長期に作られた国内の橋梁(きょうりょう)やトンネルといった社会インフラは、いま老朽化の問題に直面している。補修や改修の前提となる探査技術の革新で貢献しつづけるKEYTEC。今後の動向も注目だ。
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