セミナー第2部では、SPIDERPLUSを導入している設備工事会社大手オーク設備工業の高(高ははしごだか)山郷司氏が登場。1963年に設立したオーク設備工業は、大林組グループに属する総合設備工事会社。空気調和設備、給排水/衛生設備、電気設備の設計・施工、リニューアルを事業の主軸とし、一般的な事務所ビルや病院、ホテル、商業施設などの建物から、工場や研究所の産業施設やクリーンルームといった高度な生産環境の構築を得意としている。
高山氏が所属する生産企画部は、主に現場の生産性改善ツールの導入と現場管理などの全般的な管理業務を担当している。情報システム部門にも所属しており、こちらでは全社のIT化や情報化推進、情報セキュリティの強化と、従業員に対するヘルプデスク的役割も果たしている。
SPIDERPLUSの導入経緯は、そもそもの背景として、オーク設備工業では以前から現場職員の繁忙度が高く、残業時間の削減は重要事項だった。2017年にはiPadを採用し、施工管理ツールとして活用を開始。その際、「もう紙図面を現場に持ち出すことはない」とのペーパーレス化を謳(うた)い文句に普及を進めたものの、現場での用途としてはメールの確認程度にとどまっていた。その後、メモソフトを導入して用途は拡大したが、最も重要なCAD図面の閲覧には、図面データをPDF化してiPadへ保存する必要があり、「そんな手間がかかるのなら…」との声も多かった。困っていた高山氏が、SPIDERPLUSと出会ったのは、その矢先のことだった。
SPIDERPLUSならPCからCADデータをドラッグ&ドロップして直接登録するだけで、現場に居ながらにしてiPadで見られる。機能を確認した高山氏らは、さまざまな検討を経て導入を決めるに至った。SPIDERPLUS導入により、図面や各種書類などのデータを紙に印刷する手間やPDF変換、データ登録する手間は無くなり、現場からも「図面を現場に持ち出すのが簡単になった」との意見が寄せられた。
高山氏らには当初、働き方改革関連法案の法適用対策との明確な意識はなかったとのことだが、結果的に現場の労働時間短縮にも寄与するツールとなった。
他にも、オーク設備工業は、働き方改革関連法案の法適用の対策として、さまざまな施策を進めている。その1つが、現場職員の「作業所長面談」。各職員が作業所長と本社部門担当者、所属事業部の担当者も加わって、時間外労働の実情について月1回ペースでオンライン面談を行う。是正が難しい現場に関しては、各部署の方からさまざまなアドバイスや注意を促す。
また、別の取り組みでは、専属グループによる現場事務支援も展開。さまざまな書類作成や伝票処理など、現場では事務作業も多く、通常社内にいる現場事務支援グループの者が現場事務所に赴き、事務作業をサポートする。仮に現場まで出向く必要がなければ、在社のまま現場とやりとりし、入力を代行している。
現場事務支援は、同社が早期から取り組んでおり、今回の適用のために始めたものではない。他にも、同社では試験的にさまざまな施策を進めている。例えば、現場ごとに行われる打ち合わせは、現場職員の手が空く夕方6時以降に行われることが多いが、昼に早めて夕方の作業を無くすことを試みている。また、遠隔地の物件では、技術者/管理職がオンライン会議で現場状況についてミーティングしている。
最近では、レーザー光を照射して反射光をもとに対象物までの距離や形状を計測する「LiDAR(Light Detection And Ranging)」で、スマホやタブレットを用いた現地調査など、新技術や新ツールの検証も活発に行っている。
今後の方針を高山氏は、「各対策を継続していき、SPIDERPLUSの活用についても多様な施策に用いて労働の質を高め、職員一人一人が働きがいを持てる形に昇華していきたい」と話す。「働き方改革関連法の適用で重要なのは、社員の意識の持ち方であり、各人が法を守り、ワークライフバランスを目指すことにある。なぜなら、働き方改革とは、建設業界で働く方一人一人の“Well-being”を実現するための手段にほかならない。SPIDERPLUSなどのツールを有効活用して、時間外労働を削減し、日々を充足させた時間に変えていく」との力強い言葉で、高山氏は講演を終えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.