スパイダープラスが解説する「2024年法適用で建設業界はこう変わる!」 オーク設備工業の対策事例も紹介2024年問題(2/3 ページ)

» 2023年03月08日 16時26分 公開
[柳井完司BUILT]

建設業における「働き方改革関連法」のポイントと対策

 残業規制の猶予を与えられた理由は他業界に比べ、残業時間が突出して長いためだ。いきなり時間外労働の上限規制を適用しても、現実には対応は難しいという行政側の判断があった。ただ、国としては「猶予を持たせた以上、建設業界は期限までにしっかり対応せよ」と釘を刺したとも言えるわけで、「適用改正法など関係ない」という業者側のスタンスは通用しない。

 アンケートでは6人に1人程度しか法改正の中身を知らなかったが、もはや知らなかったでは済まされない。法律違反をすれば、行政/刑事手続へ進む可能性があり、労働基準法の知識不足で労働者側が不公平を感じれば、労働紛争による訴訟リスクも高まる。さらに、「ブラック企業」の悪評が広まれば、会社の信用やブランドが毀損されるレピュテーションリスクも無視できないだろう。

 では、まず知っておくべきことは何か?「少々乱暴だが一言でいえば、罰則付きに変更になった点だ」と高橋氏は言う。もともとは国が各企業に「指定の残業時間を守ってください」といったお願いレベルの「告示」だったが、法改正で国は残業超過をある種の犯罪行為と捉え、「これ以上残業を課したら法律違反で罰則を付ける(刑事罰を与える)」となった。

 国が犯罪行為と見なす、時間外労働の上限はどこにあるのか。従来の労働時間は、「1日8時間で1週間40時間」までで、超過して残業させるには、使用者は労働者と“36協定”を結ぶ必要があった。さらにその場合の残業そのものにも、段階的にルールが定められている。第1段階は36協定を結び、「月45時間年360時間」までの残業をプラスできる。第2段階では「労使合意」を条件に、「臨時的な特別な事情」がある時にさらなる残業が可能となる。ただし、臨時的な特別な事情でも、予算や決算業務、納期の逼迫(ひっぱく)、大規模なクレーム対応、機械トラブル対応などと具体例が挙げられており、36協定締結時には、こうした具体的な内容を定めておかねばならなず、業務の都合上といった曖昧(あいまい)な理由は認められない。

 第2段階の臨時的な特別の事情が認められても、さらに4つの労働時間規制がある。1.時間外労働年720時間以内、2.時間外労働+休日労働で月100時間未満、3.時間外労働+休日労働で「2カ月平均/3カ月平均/4カ月平均/5カ月平均/6カ月平均」の全てが1カ月あたり80時間以内、4.時間外労働時間が月45時間超の残業は年間6カ月が限度の4項で、全てを守らないと法律違反となる。

 もし、違反が明らかになった際は、「労働基準監督署長による幹部呼び出し指導や全社への立ち入り調査が行われ、それでも改善されなければ企業名が公表されることになるだろう」と高橋氏は予想する。最後が刑事手続きで、書類送検されて、基本的な刑事罰の適用となる。

 法律違反避けるには、どのような対策が有効だろうか。前述のアンケートでは、勤務先の労働時間削減政策についても尋ねており、本社と現場共通で時間削減に成功した各社の施策として「スマートフォンの貸与」が挙げられた。スマホ貸与で、コミュニケーションコストが相当減り、時間削減につながったのだろう。同様に現場では施工管理ツールの導入やペーパーレス化の推進が効果的のようだ。

 また、時間削減に成功した企業の76%が「社内周知」を徹底していた。こうした企業の多くが、全社メールの配信や文書掲示、社内ポータルでメッセージ配信など、さまざまな施策を複合的に実施して、社員の意識変革につながる社内周知に努めている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.