H&Companyは、建設業の賃金改定の実態について最新情報を分析した。建設業における賃金改定の実施状況では、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合が95.4%となり、全産業の85.7%と比較しても高い割合となった。その理由として、「労働力の確保」や「雇用の維持」が上位にランクインした。
電気設備業界専門の求人サイト「工事士.com」を運営するH&Companyは2022年12月13日、厚生労働省の「賃金引上げなどの実態に関する調査(令和4年分)」から、建設業の賃金改定の実態について最新情報を分析し、レポートとして公開した。
2022(令和4)年中の建設業における賃金改定の実施状況(12月予定を含む)では、「1人平均賃金を引き上げた/引き上げる」企業は95.4%だった(図1)。
全産業の「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業は85.7%となっていることから、建設業では賃上げに踏み切る企業が多いといえる。なお、建設業における賃上げの状況は、全産業の中で「学術研究、専門・技術サービス業」に次いで2番目に高い割合となっている
また、2022年の建設業における賃金改定額の調査では、「1人平均賃金の改定額」は8101円となり、前年の6373円と比較すると1728円上がっていることが分かった(図2)。
全産業では、「1人平均賃金の改定額」は5534円で、前年の4694円と比べて840円増額。そのため、全産業と比較しても、建設業は大幅に賃金が引き上げられている。
賃金改定の決定にあたり、最も重視した要素をみると、「企業業績」の割合が40.0%と最も多く、次いで「労働力の確保・定着」が11.9%、「雇用の維持」が10.7%で上位に入る結果となった(図3)。
厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」の最新データによると、2022年10月における建設業の有効求人倍率は4.7倍。仕事を探す求職者よりも、働き手が欲しい企業の数が上回る人材不足の状況がいまだ深刻な状況にある。
賃上げの重要性が日々報じられるなかで、労働者も自分の賃金には敏感になっており、他社と比べて給与水準の低い会社は、新しい人材の確保に苦労したり、自社の戦力となっている人材が他社に転職してしまう可能性もある。「新しい人材の確保」と「今働いている従業員の流出防止」のためにも、賃上げは必要な対策といえるだろう。
また、建設業では、2022年春から国土交通省によって「公共工事の入札には、賃上げを実施したことを加点ポイントに加える」という評価制度の改訂が行われたこともあり、大手建設会社を中心として賃上げを実施する企業が増加していると予想される。入札に参加していない中小企業でも、上記の理由から賃上げは無関係ではない。
建設業では、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合が95.4%となり、全産業の中でも高い割合となっている。また、1人平均賃金の改定額では、建設業が、8101円と全産業のなかで最も高く、前年の6373円と比較すると1728円上がっていることが分かった。
賃金改定の理由としては、「労働力の確保」や「雇用の維持」と答える企業の割合が多い結果。建設業では、公共工事の入札評価制度の改定も一因と推察される。
人材不足の状況が深刻な建設業で、「人材確保」は企業を運営・存続していくための重要課題であり、その対策として賃上げが必要。今後も賃上げを含め、新しい従業員の採用や今いる社員の定着に向けた取り組みの重要性はますます高まっていくと予想される。
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