「旧九段会館」を復元した複合施設が開業、東急不動産が復元技術を内覧会で紹介プロジェクト(7/7 ページ)

» 2022年10月12日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]
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腹筋が行えるイスや足の筋肉を鍛えられる座席を屋上庭園に配置

 保存棟5階のルーフトップガーデンは、入居者と一般消費者が利用可能な屋上庭園で、イスや机、緑が配置されており、打ち合わせなどが行え、隣接するエリアにはくつろげる入居者用のラウンジも設置されている。ルーフトップガーデン内のウェルネスガーデンは、入居者用の庭園で、腹筋が行えるイスや足の筋肉を鍛えられる座席といった健康家具を用意している。

 こういった取り組みにより、日本政策投資銀行が創設した認証制度で、国内トップクラスの環境配慮がなされたビルとして「DBJ Green Building認証」を取得した。

「ルーフトップガーデン」
「ルーフトップガーデン」のラウンジ
「ウェルネスガーデン」
腹筋が行えるイス

 新築部分に設けられた地上17階のオフィスを含む基準階のオフィスは、専有面積が2500.82平方メートルで、天井高は2.8メートル。室内には、長寿命・省電力のLED照明と照度自動調光センサーを採用し、状況に合わせて明るさを適切にコントロールできるようにしているだけでなく、レイアウトを変えやすいグリッド式天井システムを導入し、フレキシブルなオフィスレイアウトを実現した。

地上17階のオフィス

 さらに、窓には、ワンタッチで開閉する電動ブラインドを設け、日照を遮ることで、空調負荷の低減を図っている他、搭載された個別空調システムで、45分割の空調ゾーニングを達成し、ゾーン単位で空調のオン/オフとゾーンにおけるブロックごとの温度調整、冷暖房の切り替えが行えるようになっている。

 保存棟の外装に関しては、創建時の外壁で使用されているスクラッチタイルや擬石(ぎせき)を再活用するために、スクラッチタイルと擬石に温水高圧洗浄を行い、擬石に表面微細研磨を実施した後、スクラッチタイルに5万4000本の、擬石に約7300本のアンカーピンニングを実行し、外壁を復元した。

保存棟の外観

 なお、アンカーピンの頭部は、取り付ける素材の色を模して着色し、保存部分と同化させて、レトロモダンな意匠性を確保し、アンカーピンニングで生じた躯体の削孔部にはエポキシ樹脂を充填して、耐久性と安全性を高めた。

 また、保存棟の軒部分や最上階の外壁は、従来リソイド塗りで仕上げられていたが、以前の改修によりリシンが吹き付けられていたため、建て替えでリシンを超高圧洗浄で除去した後、ピンネット構法で剥落防止対策を行い下地を作り、樹脂材をベースに特注の石材を混入したリソイド風吹き付け塗装で創建時の室兼を再現した。

 加えて、リソイド風吹き付け塗装を導入する前には、塗料の試作を30回以上繰り返し、最適な色味を復元している。

九段会館テラスの概要

 九段会館テラスは、S造(CFT造)・RC造・SRC造地下1階/地上5階建ての保存棟と地下3階/地上17階建ての新築部分で構成され、高さは約74.9メートルで、延べ床面積は約6万8108平方メートル。

 所在地は東京都千代田区九段南1丁目5番1で、敷地面積は約8765平方メートル。用途は、事務所、店舗、集会場、駐車場など。アクセスは東京メトロ半蔵門線/東西線/都営新宿線「九段下」駅から徒歩1分。

 設計は鹿島・梓設計・工事監理業務共同企業体が担当し、施工は鹿島建設が担っている。保存棟の竣工は2021年12月で、全体の竣工は2022年7月29日。

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