建物正面の玄関ホールでは、創建当時の床と壁に使用されていた大理石を活用し、重厚な雰囲気を持たせただけでなく、大理石に調和するように、床や天井などでは創建時の素材に近い建材を利用し、レトロモダンな空間を実現している。
なお、これまで1枚当たり250キロのブロンズ製扉4枚で構成される3基のドアが玄関ホールで使用されていたが、同様の扉を作成すると数千万円の費用がかかる他、ドアと建具の隙間は上下それぞれ数ミリしかなく精巧な仕上げであることを踏まえて、東急不動産は、腐食が進んでいたブロンズ製扉のスチール部分に関して、ステンレスで下地を作り直した。
加えて、黄銅製の擦り消しビスによるブロンズ仕上げ材の組み直しを行いつつ、創建時の部材を最大限保存し、扉枠は手作業で緑青を取り除きながら下地材をステンレスに交換して、腐食が進行したブロンズ部は色合いを似せた新規材で復元するといった工夫を凝らし、試作の作成を繰り返しながら約3年かけて修復した。
玄関ホールの建具では、以前からチーク材の欄間部にはめこまれていた、鋳型で製造されたサーベル模様の装飾(ブロンズ製)に対して、腐食がないかを確認しながらきれいに磨き上げ再活用している。
エントランスホールでは、柱形に使用されていた高級材料「長州オニックス」の再製作が困難だったため、損傷防止対策とした頑丈な養生を施しながら工事を進めたところ、表面が変色し、解決策として熟練石工による職人技で、元の色に復元した。
なお、副玄関部の大理石壁面で使用されていた長州産の貴重な霞(かすみ)大理石も再製作が不可能だったため、バリアフリー法に基づく傾斜角度へと変更しながら受金物による補強を施し、元素材の保存を行った。
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