地上2階のバンケットホールである鳳凰は、延べ床面積が298平方メートルで、従来の床や壁、天井仕上げに歴史的な価値があったため、エイジング塗装や代替材などを活用した補修を行い、復元と保存を実施した他、ラウンジとして使える100平方メートルのホワイエも付帯し、パーティーや表彰式、セミナー、講演会、医療系の学会、オンライン配信イベント、分科会場、控室といった幅広い用途で使えるように仕上げた。
ゲストルームの雅と葵は、以前は応接室や役員室として使用されていた部屋で、建て替えにあたりパントリーを撤去した上で補修と復元を行った。一例を挙げると、創建時に施工された漆喰(しっくい)塗りの天井に関しては、当時の技術を持つ左官職人がほとんど存在しなかったため、専用の鏝(こて)を開発し復元した。
雅では、応接室の解体前に金糸刺しゅうのクロスが発見され、金糸刺しゅうが正倉院宝物殿にある銀壺と類似した模様で、歴史的価値が高く、後年補修の塗料を除去し復元を行った。葵では、窓側のクロスを復元し、他の部分は現代のクロスを取り付けた。
上記の2部屋は、寄木張りの床や絹織物(紗織)の天井を設け、室内に合わせてセレクトされた高いデザイン性の家具を配置し、創建時の雰囲気を演出しており、VIP用の控室、プレゼンテーション、ドラマと映画の撮影、オンライン配信会場といった多様な用途で利用できる。
鳳凰、玄関ホール、葵の漆喰について、創建時のものは剥落するリスクがあったため、天井平面箇所の漆喰部分をラス網下地ごと撤去し、新たに耐震性があるLGS下地を組み直して、この表面に貼り付けたプラスターボードに漆喰素材の塗装を施した。さらに、複雑な形状の梁型部分は、石こう復元すると剥落するリスクが高まるため、独自形状を保存しながら透明膜で保護し、漆喰と質感を合わせた弾性塗装を導入した。
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