では、アドビでは、こうした課題をどのようにして解決していくのか。まず、デジタルエコノミーの推進を実現した事例として引用したのが、東京・「下北沢」駅周辺で行われた商店街活性化プロジェクトだ。2022年7月に、同地区の約800店舗を対象としたワークショップを開催。誰でも簡単にデザインデータを作れるアプリ「Adobe Express」を用い、チラシやポスター、SNS用コンテンツなどの制作をサポートし、街全体でデジタルの浸透に寄与する活動を支援している。他にも、アドビ運営のクリエイター向けSNS「Behance(ビハンス)」上で、京都の絹織物「西陣織」も紹介し、海外のデザイナーへ日本の伝統工芸品の魅力を発信している。
さらに、デジタルトラストの実現では、高い安全性を持つ電子署名アプリ「Adobe Acrobat Sign」のPRに注力。一般企業はもとより、自治体や学校、行政のデジタル庁など、セキュリティ要件が厳しい組織でも採用が続々と進んでいる。その上、Twitterなど750社以上の企業と連携し、デジタル作品の盗用などの問題にテクノロジーで対策を講じる組織「コンテンツ認証イニシアチブ」を発足。業界横断で協力しつつ、デジタルトラストの課題解決に取り組んでいる。
しかしながら、デジタル人材の育成については、神谷氏も頭を悩ませる。現状アドビでは、「データを解釈し、課題を発見する能力」と「課題に対してアイデアを引き出し、形にする能力」がデジタル人材に求められていると考え、双方を兼ね備えた「クリエイティブ デジタル リテラシー」を持つ人材育成に力を入れているそうだ。今後は、社長直下の専門組織も設置し、さらなる育成環境の加速を目指していくという。
加えて、全ての子どもたちに、1人1台タブレット端末を配布する文部科学省による「GIGAスクール構想」も追い風となっている。小中高向けのライセンス収益は、この2年間で60%アップ、大学専門学校向けのライセンスも対前年比で約15%増加。これからも、学生のスキルアップを後押しするサービス向上は続けていきたいと神谷氏は話した。
こうしたように、3つのクラウドサービスを通して、デジタル化の推進に貢献していくアドビ。デジタルエコノミーを推進し、デジタルトラストを実現し、クリエイティブ デジタルリテラシーを持つ人材を育成していく同社の次の30年に期待したい。
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