新型ウイルスの感染拡大により、2020年4月に緊急事態宣言が発令され、建設業界でも、新規受注の減少、設計の在宅勤務、工事中断など、多大な影響が顕在化してきている。ワクチンなどによる鎮静化をただ待つだけでなく、建設業にできることは果たして何もないのだろうか?新型コロナウイルスだけに限らず、自然災害や労働災害といった災害に対し、BIMなどの先端技術を使って何ができるのか、いま一度再考してみよう。そして、この災害を、自らの仕事を変える好機と捉え、業務改革を実現しよう。
2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、大和ハウス工業の社員にも罹患者が発生し、感染拡大を防ぐために、全国の事務所閉鎖や施工現場の休工という事態に陥った。
建設市場全体をみても、コロナ災害によるダメージは、計り知れないものとなりつつある。受注の減少や工期遅延による工事費の増大だけでなく、海外資材の不安定な供給、小規模工務店の経営危機による職人不足などという懸念もある。
こうしたコロナ禍にある状況の中、筆者も在宅勤務を余儀なくされている状況だが、逆にテレワークの有効性を見直す良い機会となった。直接会って会議をするということが当たり前だったが、TV会議で済んでいる。また、「Autodesk BIM 360(以下、BIM 360)」というクラウドサービスに搭載されているワークシェアリングの機能で、設計担当者が自宅にいても、Revitの作業が行える。今回のことで、技術が確実に進歩していることを実感した。BIMを核に据えることで、ICT活用が進み、建設業の働き方改革が現実のものになることが期待される。
ところで、災害とは、一般的に「自然現象や人為的な原因によって、人命や社会生活に被害が生じる事態」を指す。従って、自然災害だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大も、世界中で起こっている“災害”だと言い換えられる。コロナ災害だけに限らず、地震や台風などの自然災害に対しても、新しいテクノロジーで、どう乗り越えてゆくのかを考察していかねばならないだろう。
まず、自然災害について考えてみよう。日本は自然災害大国である。毎年のように、地震や台風などの自然災害が起きている。
自然災害に対する建築業界の取り組みとしては、応急仮設住宅建設がある。当社は熊本大学との共同研究で、地震や台風などの自然災害時に提供する応急仮設住宅の建設期間を短くし、被災者に1日でも早く仮設住宅を提供している。BIMの自動設計プログラムを活用し「配置計画の自動化」を構想しているが、その先には仮設住宅の施工段階での活用も視野に入れている。
新型コロナウイルスに対しても、既存の建物を改築して、臨時の病床を作る場合もあるが、アメリカの貨物コンテナを使った建設会社Three squaredは、感染症の病床不足に対処するコンテナ式建物の提供を開始した。コンテナハウスなので、トレーラーで病室をどこにでも移動できる機動力が他には無い優位性となっている。
コロナ災害は、建物を破壊するような性質のものではないが、患者を隔離・療養するために、感染が拡大し患者が増えると、医療体制の崩壊を招きかねないため、こうした施設のグローバルでの需要はこれからも高まっていくに違いない。
応急仮設住宅におけるBIMの取り組みについて、もう少しご説明しよう。2019年に米国ラスベガスで開催された「Autodesk University」で、地震や台風などの災害時に、応急仮設住宅建設でのBIM活用について発表した。聴講者の反応をみるに、海外でも災害対応の新技術への関心の高さがうかがえた。
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