だが、当然ながら顔認証 for グリーンサイトさえ採用すれば、全ての問題が即座に解決するというわけではない。顔認証 for グリーンサイトで現場管理を行う際には、現場での通信環境はやはり欠かせない。そこで飛島建設は、関連機能をタブレット端末に集約させた。
しかも、せっかく各現場に配置するのだから、顔認証以外の作業にも活用しようということで、多機能デジタルサイネージをもとにした共創プラットフォーム「e-Stand」を開発。現在では、安全教育や資材購入のEC(電子商取引)、デジタルサイネージとの連携、現場事務所や本社から建設現場を確認するWebカメラといった各種機能を備えている。
サービスのうち、安全教育は、各現場での安全教育や新規入場教育、現場概要などの動画を制作し、e-Standを通じて現場に遠隔配信するもの。小規模現場では、安全教育を紙ベースだったことも多く、現場監督はその作業に1日15〜20分も費やしている。それが一年も続いたら、どれほどの時間を浪費することになるのか。
ならば、その内容を映像にまとめて、現場に提供していこうというわけだ。もちろん映像制作も、本社で一括して制作すれば、その部分も効率化される。また、同社の安全教育動画は、冒頭に社長が登場して話をするほか、外国人労働者向けに外国語の字幕なども付け、事故を未然に防ぐための効果的な動画作りを目指している。
デジタルサイネージのe-Stand利用では、安全教育などの動画配信や各種お知らせ、注意喚起の告知類など、詰所に置いたモニターで行う。ポスターを貼る手間の削減に加え、新規入場者の教育も現場に合わせて実施できるようになる。
ほかにも、現場で必要な工具や弁当などを購入できるECの仕組みも、e-Standならではの機能。従来は現場でいちいち現金で購入し、領収書を処理する手間が生じていたが、ECにより小口現金も領収書処理も不要となり、バックオフィス業務の効率化が進んだとのことだ。また、Webカメラとの連携機能により、事務所から現場確認だけでなく、災害時の緊急対応も可能になる。
それでも、「やり方が分からない」「マニュアルを送っても現場が使ってくれない」などの声が寄せられることが少なくないと科部氏は漏らす。そこで飛島建設では、こうした各現場の違いを把握して、きめ細かなITサポートを提供する「DXトータルサポート部隊」を編成した。
現場経験が豊富な科部氏も、「現場へのIT/DXの確実な普及には、IT専門の監督である“IT監督”の展開がどうしても必要だ」と考えている。IT監督とe-Standに代表される「e-シリーズ」の活用で、現場のIT対応をワンストップで支援していくことを当面の目標としている。
さらに、「e-Standによる展開は社外にも広げ、ゼネコン各社がe-Standを介して連携し、協力体制を築き、共創していくことで、現場のDX実現につなげ、建設業を良くしていきたい」と科部氏はそう語り、セミナーを終えた。
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