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» 2022年05月13日 10時00分 公開

【第12回】「見えないものを見る」AIとセンシング技術の可能性“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(12)(2/2 ページ)

[阿部雅人(土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会 副委員長),BUILT]
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赤外線サーモグラフィーは“内部劣化”や“漏水”の検知に有効

 構造物の劣化部分については、空隙などの影響のために、周囲と温度の伝わり方が異なり、温度差が発生することがあります。その特徴に着目して、温度分布を可視化する赤外線サーモグラフィーにより、内部欠陥を見つける方法も検討されています。

 下左図の温度差がある領域は、下中図で見ると表面的には問題ありません。しかし、打音検査で劣化部が見つかったため、たたき落としたところ、下右図のように内部に欠陥が見つかりました。このように、内部欠陥を検出する方法として赤外線サーモグラフィーは有望であり、特に画像の解析でAIを用いれば、効率的に内部欠陥の検出が可能となることが期待されます。

熱画像(左)、打音検査前の可視画像(中)、打音検査後の可視画像(右) 出典:※5

※5 「赤外線サーモグラフィー法における損傷自動判別技術」川西弘一,林詳悟,橋本和明,氏家勲,全邦釘/AI・データサイエンス論文集1巻J1号p382-391/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2020年

 さらに赤外線サーモグラフィーは、漏水の検知にも有効です。文献6「赤外線カメラによる排水管漏水箇所検知に関する基礎的検討」では、配水管の漏水が有る場合と無い場合の熱画像をAIで分類しています。

 下左図の漏水有りの画像では、屈曲部で大きな温度変化が見られますが、漏水のない右図にも温度変化がみられるため、必ずしもその判定は容易ではありません。このような場合でも、AIによって高い精度で判定できています。

漏水あり画像(左)と漏水無し画像(右) 出典:※6

※6 「赤外線カメラによる排水管漏水箇所検知に関する基礎的検討」白旗弘実,加藤健太,露木勝博/AI・データサイエンス論文集1巻J1号p392-397/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年

 橋は、舗装下に鉄筋コンクリートの床版が設置されており、車両などの荷重を支える構造になっているものが一般的です。コンクリート床版の上面に水が入り込み、滞水すると劣化の原因になることが知られています。舗装の上からでは、コンクリート上面の湿潤状態は分かりません。そこで、湿潤状態によって、電磁波レーダの反射が異なることを利用して計測する研究が進められています。

 下図は、レーダ計測にAIを適用して、湿潤状態を検出した例です。左図にレーダ計測をもとにAIで推定した湿潤状態が水色で示されています。その周辺の赤枠部分を開削して、湿潤状態を調べたものが右図になります。右図の青数字が湿潤していた箇所です。左図で湿潤と推定された領域の方が、より高い湿潤状態になっています。

湿潤検知箇所(左上)とその場所の開削計測結果(右上)。ならびに湿潤検知されなかった箇所(左下)とその場所の開削計測結果(右下) 出典:※7

※7 「電磁波レーダを用いた床版滞水推定AIの構築」夏堀格,岩谷祐太,石田雅博,松本直士/AI・データサイエンス論文集2巻J2号p691-699/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年

 インフラ構造物を安全かつ効率的にメンテナンスしていくためには、その内部の状態をよく知る必要があります。打音検査に加え、超音波や赤外線、電磁波などのセンシング結果にAIを適用することで、これまでは見えなかった構造物の内部を調べる技術が大きく進展しています。

著者Profile

阿部 雅人/Masato Abe

ベイシスコンサルティング 研究開発室 チーフリサーチャー。防災科学技術研究所 客員研究員。土木学会 構造工学委員会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会 副委員長、インフラメンテナンス国民会議 実行委員を務める。近著に、「構造物のモニタリング技術」(日本鋼構造協会編/コロナ社)がある。

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