横河電機とJSRは、AIによる35日間の化学プラント自動制御に成功した。両社発表によると、世界初の事例になるという。高信頼性が求められるプラントの制御にAIを適用できることを実証した。
横河電機とJSRは2022年3月22日、AI(人工知能)が化学プラントを35日間自動制御したと発表した。同発表によると、世界初の事例になるという。
今回両社は、横河電機と奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)が共同開発した強化学習AI「FKDPP」(Factorial Kernel Dynamic Policy Programming)が、高信頼性が求められるプラントの制御に適用可能であることを確認すべく実証実験を実施した。
JSRの国内化学プラントを対象に、蒸留塔内やこれまで手動制御でしか対応できなかった箇所、降雨や降雪といった急激な外気温の変化が制御を乱す外的要因となる箇所を制御した。2022年1月17日から2月21日まで、840時間にわたり連続制御している。
降雨や降雪があったにもかかわらず、精製した製品は基準を満たしており、既に出荷を開始している。良品のみを量産できるため、規格外品の発生に伴う燃料や人件費などが削減可能となった。
横河電機子会社のオメガシミュレーションが提供したプラントシミュレータ「OmegaLand」により制御モデルを生成したほか、過去の運転データやリアルタイム操業データを用いてAI制御モデルの信頼性および妥当性を検証した上で、実プラントの制御に至っている。
実プラント制御では、既存のインターロックなどの機能により安全を確保した。また、統合生産制御システム「CENTUM VP」をプラントの操業に組み込んでいる。さらに、AIシステムに異常が発生した際の体制や対応方法を整備した。
両社は、今後も協力してプラントでのAI活用方法を検討する。また、横河電機は、今回の取り組みに関心のある顧客を募集するほか、プラント制御を自律化する製品やソリューションの早期提供を目標とする。JSRは、他工程や他プラントへの応用を検討する。
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