大成建設は2017年11月、横河電機、長野日本無線、東京大学と共同で構造物モニタリングシステムを開発したと発表した。新開発のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサーと無線技術により、長期間にわたり構造健全性を判定できる。
大成建設は2017年11月、横河電機、長野日本無線、東京大学と共同で構造物モニタリングシステムを開発したと発表した。長期間にわたりメンテナンスが不要な新開発の高精度MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサーと920MHz帯無線通信を組み合わせ、長期間にわたり構造物の健全性を判定できる。
橋梁などの社会インフラや既存建築物の老朽化が国家的課題に挙げられる一方、これら構造物の維持管理に必要な人材育成や技術開発が産学官連携のもと急ピッチで進められている。本システムは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」の一環として開発。横河電機が高精度MEMSセンサー、長野日本無線が920MHz帯無線通信、大成建設と東京大学が構造物健全性評価の開発担当となった。
本システムで新たに開発したMEMSセンサーは、振動計では1ミリガル(mgal)、歪み計では1nmの分解能を持ち、従来センサーよりもメンテナンスサイクルを長期化したことが特長。これにより、構造物に生じた微小な変形や振動を長期間にわたり正確に計測することができるという。
センサーから得たデータは、建物内部の壁や天井などの構造物に影響されにくいサブギガ帯無線である920MHz帯で送信される。各フロアに設置された受信装置にセンサーデータを集約し、診断PCに転送されるため構造物の配線作業が軽減できた。また、電源が利用できない場所へ設置することを目的として、自立電源装置を開発中としている。
診断PCでは構造物健全性評価システム「T-iAlert Structure」が動作し、センサーが取得した測定データから構造物の固有振動数や歪み、傾斜角度を解析し、長期間における経時変化を監視することが可能。震度3以上の地震が発生した場合には、1次診断として構造物に生じる振動から健全性を判定する。1次診断により異常が認められる場合は、2次診断として損傷箇所を推定することが可能となる。
今後、2018年度までに既存の建築物や土木構造物などを対象とした実証実験を積み重ね、同時に本システムの解析結果から構造物のBCP対策提案を行う。2019年4月から順次、本システムの本格的導入に向けた展開を進める予定だ。
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