地域マイクログリッドの構築に向けた模擬電力網制御実証公開試験を実施、戸田建設ら産業動向

戸田建設は、DGキャピタルグループと共同で、デジタルグリッドルーターを活用した模擬電力網制御の実証公開試験を行った。

» 2022年03月08日 13時00分 公開
[BUILT]

 戸田建設は、経済産業省資源エネルギー庁が募集する「令和3年度地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業地域マイクログリッド※1構築支援事業」を介し、岩手県宮古市で地域マイクログリッドの導入プランを作成している。

※1 地域マイクログリッド:既存電力系統(以下、電力系統)の停電など、非常時に、従来の電力系統線を利用しながら、電力系統とは独立して運用が可能な小規模な電力網。平常時は、電力系統から電力供給を受けつつも、マイクログリッド内の太陽光発電、風力発電、小水力発電などの再生可能エネルギー電源(以下、再エネ電源)を有効に利用して、電気使用量の平準化、ピーク電力量の削減などを実現する。加えて、災害などによる大規模停電時には、電力系統から切り離し、マイクログリッド内の再エネ電源などを活用することで、災害拠点などの重要施設を自動で稼働させる。地域マイクログリッドは、再エネ電源、蓄電システム、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などで構成され、災害時のレジリエンス強化、脱炭素化に向けた再エネ電源率の向上、エネルギーの地産地消による地域経済への貢献などの効果をもたらす。

 導入プランの中で採用を検討しているデジタルグリッドルーター※2(以下、DGR)の適用可能性を実証するために、DGキャピタルグループと共同で、DGRを活用した模擬電力網制御の実証公開試験を行ったことを2022年2月18日に発表した。

※2 デジタルグリッドルーター:交流電流を一度直流に変換してから再度交流に戻す機能を持ったハードウェアで、電圧、周波数、位相の異なる電力系統とマイクログリッドを連系させられる(以下、非同期連系)。

災害時にマイクログリッド内の電力供給を安定化するDGR

 地域マイクログリッドは、平常時は電力系統と連系し、災害時は電力系統から独立して運用されることが想定されている。そのため、平常時は電力系統と電圧、周波数、位相を同調させる必要があり、災害時はマイクログリッド単独で安定した電力を供給する必要がある。

地域マイクログリッドのシステムモデル例 出典:戸田建設プレスリリース

 しかし、太陽光発電や風力発電といった再エネ電源は、時刻や気象条件などによって発電量が変動するため、電力系統内では火力発電をはじめとする出力の調整が容易な電源のサポートで安定性を保っているが、小規模なマイクログリッド内で変動の大きい再エネ電源が増え過ぎると安定した電力供給が困難になる。

 解決策となるのがDGRだ。DGRは、マイクログリッド内の発電機器(電源)や電力使用機器(負荷)を制御する機能、GPSの時刻信号を使ってマイクログリッド内電源の周波数を同期させる機能、高速演算によって電源・負荷をリアルタイムで制御する機能などでマイクログリッド内の電力供給を安定させられる。

 さらに、災害などで電力系統内に停電が生じた時には、自動的に電力系統とマイクログリッドとを分離し、マイクログリッド内を停電することなく、自立運転に切り替える。加えて、DGRは蓄電システムを備えているため、マイクログリッド内の再エネ電源や非常用電源を有効活用し、一定期間の自立運転を継続させられる。

 また、DGRは、マイクログリッド内の発電機器や電力使用機器の電力情報をソフトウェアで制御し、ブロックチェーン技術を用いてこれらの情報をタグ付けすることができ、再エネなど環境付加価値に着目した電力取引などが行える。

 今回の試験では、地域マイクログリッドを想定した模擬電力網を構築し、模擬電力網の制御状況確認試験や停電などの非常時を想定した試験を実施した。具体的には、GPSを利用して各機器を同期する試験、模擬電力網内の電力需要が大きく変化した場合をイメージした試験、電力系統の停電をモチーフにした試験、模擬電力網内の停電を想定した試験を行い、各試験で期待した結果が得られた。

 今後は、作成している導入プランの実装に向けて、技術的課題や事業性判断、地域の合意形成、マイクログリッドの運営に必要な体制整備などを進めていく。

実証試験の状況 出典:戸田建設プレスリリース

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