竹中工務店はビルなどに設置した太陽光発電などの複数電源を一括制御し、電力デマンドを調整する新型のエネルギーマネジメントシステムを開発した。負荷予測システムや最適運転計画システム、個別の分散型電源システムをトータルに制御できるのが特徴だ。
竹中工務店は2015年9月25日、電力システム改革後に想定されている多様な料金メニューに対応し、電力デマンドを最適かつリアルタイム制御できるエネルギーマネジメントシステム(EMS)「I.SEM(アイセム)」を開発し、関連会社であるTAKイーヴァックの新砂本社ビル(東京都江東区)に実証導入したと発表した(図1)。
「I.SEM」は導入した建物の熱や電力などの負荷予測を行い、それに応じて熱源や空調機器などの運転を最適に計画できる。さらに分散電源をまとめてリアルタイム制御できるなど、複数のシステムを統合している点が特徴になる(図2)。各システムの概要は以下の通り。
電力負荷と熱負荷を±5%で予測するエンジンに、居住者の意向を反映させるパーソナル対応デマンドレスポンスを加味したシステム。居住者に不満のない環境での高精度な負荷予測を行う。
電気熱源やガス熱源、蓄熱などの複雑な熱源機器と、EV充電のスケジュールを、コストや省CO2などの目的に合わせて最適化し、電力調達の計画値を決定するシステム。分析機能は竹中工務店が開発したクラウド型のプラットフォーム「ビルコミ」上に構築する。30分単位の計画値に対して電力デマンドを±3%に制御する他、さらに短い周期への電力デマンドへの対応も可能だという。
太陽光発電や発電機などの多様な電源を最適にコントロールし、空調や照明と統合して電力需要をリアルタイム制御するシステム。太陽光発電、発電機、電気自動車(EV)など最近のビルに採用されているさまざまな分散型電源を統合し、建物の電力消費に応じてリアルタイムに充放電が行える。
リアルタイム制御システムの中核となるのは、竹中工務店が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成プロジェクトで、アイケイエスと共同開発した「MSEG(multi-source energy gateway:エムセグ)」だ。
MSEGはパワーコンディショナー機能とバッテリー機能を一体化したSiCパワー・モジュール搭載型コンポーネントに、リアルタイム制御機能を加えたもの。一般的に分散型電源で作られた電力を建物で利用する場合、個別に直流を交流に変換する必要があるため、一定以上の電力損失が生じてしまう。MSEGは複数の電源から作られた電力をまとめて直流制御することでこの問題を解決している。さらに一括制御も可能にすることで、停電などの非常時でも複数の電源からの安定した電力供給を実現し、BCP(事業継続計画)対策にも貢献する。
これまでも個別のビルの負荷予測システムや分散電源の制御システムは存在したが、I.SEMのように各種の個別システムをクラウド上に構築してトータルに制御するEMSの実用化は初だという。
竹中工務店はI.SEMを初導入したTAK新砂ビルでの実証データの蓄積を行い、さらにシステムの充実を図る。その後はオフィスビルをはじめ、集合住宅や学校、大型ショッピングセンター、駅ビルなどのエネルギーマネジメントとBCPニーズの高い建物に提案していく方針だ。
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