西松建設は、山岳トンネル施工に使用する各重機の遠隔無人化・自動化技術を効果的に組み合わせた山岳トンネル無人化施工システム「Tunnel RemOS」を2023年度までに完成させるために開発を進めている。Tunnel RemOSを構築する技術の1つとして、ジオマシンエンジニアリングと共同で、独自型枠システムと急硬性コンクリートを用いたトンネル連続ライニング工法「PL-CAST」を開発した。
西松建設とジオマシンエンジニアリングは共同で、山岳トンネル工事に用いる吹付けコンクリートの仕上がりを平滑にし、粉じんやはね返り量を最小化する施工技術「PL-CAST」を開発したことを2022年2月3日に発表した。
山岳トンネル工事に用いる吹付けコンクリートは、急結剤を添加したコンクリートを圧縮空気の力でノズル先端から吹き飛ばして施工する。この時、粉じんの発生やコンクリートのはね返りによるロスが施工上の問題となっていた。
さらに、吹付けたコンクリートの表面を平滑に仕上げるには作業者の技術力が要求されるため、粉じんやはね返りの発生を低減し、経験の浅い技能者でも平滑な仕上りを実現する技術が求められていた。
そこで、西松建設とジオマシンエンジニアリングはPL-CASTを開発した。PL-CASTは、吹付け機のエレクターブームに搭載して動きを制御するクローラ型専用型枠と急硬性コンクリート※1を用いて、平滑なライニング(一次覆工)を連続的に施工する。
※1 急硬性コンクリート:急硬成分などを含有する材料をスラリー化して添加・混合したコンクリート。初期には流動性が高く、その後、極めて短時間に強度が発現するため、急速施工に有効
具体的には、支保工の建て込みに用いる吹付機のエレクターブームに、クローラ型の専用型枠を搭載して施工し、専用型枠は支保工面に沿って移動して、打ち込むコンクリートは流動性が高く急硬性に優れているため、ライニングを連続的に施工可能。
使用する吹付け機は、小さな動きを制御しやすいようにPLC制御方式※2に改造している他、型枠の位置や傾きは、エレクターブームに取り付けた傾斜計や回転計、距離計などの各種センサーを用いて把握できるシステムを構築したことで、型枠が支保工面に沿って安定かつ正確に移動する。
※2 PLC制御方式:「Programmable Logic Controller」の頭文字の略。リレー回路の代替装置で、機械装置の制御に広く利用されており、自動ドアやエレベーターなどの制御にも用いられている
利用する急硬性コンクリートは、高強度配合(水セメント比42%で単位セメント量が1立方メートル当たり450キロ)を標準とし、専用の混和材(剤)を添加・混合することで、初期流動性と急硬性をあわせ持った性状を有している。
このため、コンクリートを支保工の背面隅々まで充填し、かつ打ち込んでから60〜90秒ほどで型枠を動せる。加えて、平滑な仕上がりとなることも実物大模擬実験で確認し、施工速度は現行の吹付け施工と同程度の1時間当たり6〜11立方メートル(ロス考慮)で、粉じんやはね返りによるロスを最小限に抑えられる。
今後、両社は、PL-CASTにより、これまでの山岳トンネル工事における吹付けコンクリートの施工を改良し、施工の効率化と品質向上につなげるだけでなく、現場での施工試験などを通してデータを取得し、2022年度の実用化に向けて開発を進めていく。
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