山岳トンネル工事で切羽のコンクリート吹付を遠隔操作山岳トンネル工事

大成建設は、山岳トンネル工事で、切羽(掘削面)のコンクリート吹付を遠隔化する「T-iROBO Remote Shotcreting」を開発した。

» 2019年07月22日 07時21分 公開
[BUILT]

 大成建設は、山岳トンネル工事で、切羽(掘削面)でのコンクリート吹付作業に使用する遠隔操作技術「T-iROBO Remote Shotcreting」を開発した。吹付作業の安全性向上と環境改善が実現する。

HMDで切羽吹付作業を遠隔操作

 山岳トンネル工事における従来のコンクリート吹付作業では、操作者が切羽近くに立ち、切羽への吹付仕上りの状況を目視で確認しながら、吹付機をリモコンで操作している。そのため、操作者は切羽からの土砂の崩落、吹付材の跳ね返りなどによる危険性やコンクリート吹付で発生する粉塵(ふんじん)の影響などで作業効率が低下する可能性があった。

 厚生労働省は「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」で、切羽への作業員の立入りを制限し、切羽近くでの作業を可能な限り機械化する方策の検討を推進している。

 大成建設は、こうした状況を踏まえ、2016年に開発済みの遠隔操作システム「T-iROBO Remote Viewer」を応用し、コンクリート吹付作業に適用した遠隔操作技術「T-iROBO Remote Shotcreting」を開発した。新技術を実際の山岳トンネル工事(南山造成 読売ランド線トンネル築造工事)での吹付作業で実証し、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用いた遠隔操作による吹付作業を安全かつ効率的に実施できることを確認した。

本技術の装置構成(左)、HMD装着時の吹付作業状況(右) 出典:大成建設

 T-iROBO Remote Shotcretingは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、魚眼レンズ付きカメラ2台、カメラボックス、カメラボックスが移動可能な走行レールおよびLED投光器で構成。魚眼レンズ付きカメラは、粉塵・吹付材の付着を防ぎ、視認性の向上を図るため、カメラボックス内部に設置。本装置一式があれば、吹付機自体の改造や装備追加などを行う必要がない。

 魚眼レンズの採用で、超広角の画像を取得でき、カメラの向きを頻繁に変えずに済む。また、切羽左右への吹付け作業では、カメラボックスとLED投光器を一体化してレール上を移動できるため、吹付方向の切替えが容易に行える。

 HMDと魚眼レンズ付きカメラ2台の組合せにより、吹付機操作者は切羽から十分離れた位置で、切羽近くに居るような遠近感・臨場感を持って吹付作業を行うことが可能となり、通常のカメラ単体では困難な吹付厚さの管理を行える。

 吹付機の操作者は、座った姿勢で遠隔操作でき、操作者の身体的負担が軽減されるとともに、作業効率の向上が見込まれる。

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