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» 2021年09月10日 11時30分 公開

都市木造の現在、建築基準法と木造の最新耐火技術木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―(6)(1/2 ページ)

本連載では、一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYAを主宰する一級建築士の鍋野友哉氏が、近年環境に優しいなどの理由で関心を集める木材活用にスポットライトを当て、国内と世界における木造建築の歴史や最新の木造建築事例、木材を用いた構法などを紹介する。連載第6回となる今回は、国内の都市木造建築物と、都市での木造を実現するためにクリアすべき建築基準法や耐火技術について採り上げる。

[鍋野友哉(鍋野友哉アトリエ主宰、お茶の水女子大学・法政大学兼任講師),BUILT]

 前回の連載では、歴史的な防耐火の歴史について述べました。今回は、日本で現在、都市木造(都市の木造施設)がどこまで進化しているのかに関して、現在の建築基準法と耐火技術を踏まえてお話ししたいと思います。

木造建築物の設計・建築計画で重要なポイント

 現在の建築基準法および同法の施行令では、防耐火がどのように扱われているかを俯瞰(ふかん)してみます。まず、建築物の規模または用途によって、求められる内容が変わります(建築基準法第21条および第27条)。

 次に、その土地がどこにあるか、つまり都市計画(防火地域、準防火地域など)を対象とした規定があります(建築基準法第61条)。そして、それらを踏まえた上で、建築物の主要構造部が耐火建築物や準耐火建築物といった枠組みのどこに当てはまり、それをどのように実現するかが規定されています。

 実際の設計・建築計画上では、耐火要件を含めて、規模の検討をすることが木造建築物の場合はより重要になっています。例えば、防火構造で告示を用いて設計するケースは、真壁造とする事も可能で、被覆をせずに木を表しにして使え、非常に自由度の高い設計を行えます。

 計画上の規模がどうしても一定の大きさを越えてしまうときは、防火上の安全性を含めて、いかにして防火壁などを配置していくかを検討することも大事です。

 上記の検討を実施しても、耐火建築物であることが求められてしまう場合は、解決策として、耐火性能を上げる薬品を注入した部材「耐火集成材」などを用いて、木を表しにするという方法があります。

 耐火集成材に関しては、2008年時点で既に、鉄骨柱を芯にしてその周囲を集成材で囲んだ木質ハイブリッド集成材を用いた建築物が建てられています。木製ハイブリッドフレームに、ガラスのカーテンウォールで外部から木を表しにすることを実現したのが「丸美産業本社ビル(設計:高松伸建築設計事務所)」です。

木質ハイブリッド集成材柱

 また、近年開発された部材「耐火LVL」というエンジニアードウッドを用いた1時間耐火の木造建築物も竣工しています。一例を挙げると、「やはた幼稚園 保育ルーム(設計:ビルディングランドスケープ)」では、心材に不燃処理した70ミリのLVLで被覆された160ミリ角の集成材を使用することで、耐火建築物を構築しています。このように、ラミナやベニアなどを加工したものを積層接着したエンジニアードウッドは、製材に比べて不燃処理などを行いやすいという利点があります。

耐火LVL

 一方で、前述の手法を一般的に用いるには予算の制約を含めてハードルが高いため、通常仕様で木造耐火を実現しようとすると、構造材である木を石膏(せっこう)ボードなどで被覆する事が必要となり、木を表しにすることが難しくなります。しかし、逆に木は構造材として割り切り、石膏ボードでコーティングすることも耐火木造の1つの解決法といえるでしょう。

 準耐火構造が必須となる際には、構造部材である木を表しにしたければ、燃え代設計が役立ちます。これは、火災時に燃える層をあらかじめ想定しておくことで、必要な断面を燃え残すという設計思想に基づいています。今日においては比較的普及している手法です。

燃え代の考え方

 また、組み立て柱と梁(はり)のように、部材を束ねて用いることで燃え代層を構成することも可能です。その燃え代層は、LVLやCLTといった部材と製材を合わせて使え、燃え代層を必要な厚みが少ないCLTが担い、製材が荷重支持部を構成するといった方法にも対応します。

エンジニアードウッドと製材の併用
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