3階建て事務所建築物でも、防火地域内で建築されるものについては、面積に関わらず、耐火建築物あるいは延焼防止建築物とすることが求められます。準防火地域内で延べ面積が1000平方メートル以下の場合は、準耐火建築物もしくは準延焼防止建築物としなければなりません。一方、準耐火建築物であれば、これまでも燃え代設計を用いることで木を表しにして設計することが可能でした。
上述の延焼防止建築物・準延焼防止建築物に関して、2019年6月25日に施行された「主要構造部規制の見直しによって定められた規定」で、いままでは石膏(せっこう)ボードなどを用いた防火被覆が必要であった耐火木造建築物が、燃え代設計を用いて延焼防止建築物とすることにより、木を表しにして使えるようになりました。
また、準延焼防止建築物の基準について、準防火地域内に建設された木造3階建ての技術的基準(旧建築基準法令136条の2)は、これまでも存在しましたが、上記の改正によって明確に性能的な位置付けが決定し、詳細な構造方法についても告示で確定しました。こういった準延焼防止建築物の規定を用いて、建築された木造3階建て事務所建築物には、2020年に竣工した日刊木材新聞社ビル(写真2-1,2)があり、建物は建築内部の耐火被覆無しで実現しています。
続いて、事務所建築物と同様に特殊建築物に指定されていない一戸建て住宅について考えてみましょう。3階建て一戸建て住宅も、防火地域や準防火地域内で延焼防止建築物・準延焼防止建築物として設計を行うことで、木を表しにすることができます。
もちろん、燃え代設計を用いた準耐火建築物として設計することも可能ですが、木造3階建ての住宅で200平方メートルを超える際には、燃え代設計を用いた準耐火構造で設計を進めてしまうと、竪穴区画を配置しなければなりません。
竪穴区画とは、火災時に吹き抜けや階段、エレベーターなど、上下方向につながる部分を通して、火災拡大を防ぐために設置を規定されている防火区画のことです。さらに、住宅の場合は、階段室回りやPS(パイプスペース)などを防火区画とし、その開口部には防火設備が必要となってしまいます。
そこで、建物を準延焼防止建築物とすることによって、準耐火構造以外で設計が可能となり、竪穴区画を外せます。例えば、第3回の連載時に紹介した木育の家(写真3-1,2)では、準防火地域内に建つ200平方メートルを超える木造3階建て住宅だったため、この基準によって設計を行いました。
ただし、前述の規定は、通常の主要構造部などへの制限だけでなく、外壁に設けられた開口部の面積にも制約があり、隣地の境界線から5メートル以下にある開口部については、距離に応じて面積に限度が生じるため、注意しなければなりません。
そして、建築物の最高高さが16メートルを超えた物件あるいは地上4階建て以下の建築物は、火災時対策建築物として設計を行うことで、木造にすることが可能です。具体的には、主要構造部を通常火災終了時間に耐える防火被覆型か、燃え代設計による準耐火構造とすることができます。
例えば、地上四階建ての場合、柱、壁、防火区画(200平方メートル以内)は75分、竪穴区画は90分の準耐火構造とし、スプリンクラーなどの消火設備や建築物周囲に3メートル以上の敷地内通路を設けることが求められます。
今回は、特殊建築物では無い木造建築物について、防火地域などの制限も含めて考えました。次回は、非住宅や事務所建築物以外の特殊建築物とされる用途の木造建築物について考えていきます。
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