国土交通省が推奨するタイムラインの立案には、専門家の知見が求められる。さらに、風水害対策の事例だけでも、対策要員の参集、従業員への避難・自宅待機指示、資材の事前手配、停電対策、生産ラインの事前停止などを行わなければならない他、建物の用途と立地を考慮した防災対策の選定・組み合わせは容易ではない。そこで、清水建設は、タイムライの策定・実践を支援するシステム「ピンポイント・タイムライン」を開発した。
清水建設は、被害が甚大化する風水害への対策として、国土交通省が推奨するタイムライン※1の策定・実践を支援するシステム「ピンポイント・タイムライン」を開発したことを2021年10月13日に発表した。
※1 タイムライン:災害の発生を前提に、災害時に発生する状況をあらかじめ想定した上で、いつ、誰が、何をするか、に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した防災行動計画
ピンポイント・タイムラインの適用に当たっては、まず清水建設の専門家が、当該施設や事業所の防災担当者にヒアリングを実施する。そして、ハザードマップ上での洪水、内水氾濫、高潮、強風といったシステムの導入先で想定される風水害の危険性や被害を防止・軽減する具体的な防災対策を策定。次に、各対策を実施する気象条件とタイミングなどを評価して、具体的な防災行動計画を策定し、システムのデータベースを構築する。
ピンポイント・タイムラインの主な機能は、システム利用者へのタイムリーな防災対策の通知と対策実施状況の情報共有。具体的には、台風や大雨などの気象予報情報が発せられた場合に、システムが気象予報情報を勘案し、最大5日前から適時、必要な防災対策を事前に登録している対策要員などに、SNSを介して通知する。
対策要員が、指定の防災対策を行い、SNSの画面に提示されるチェックボックスをクリックすることで、関係者全員で防災行動計画の実施状況を共有できる。このため、システム利用者は、風水害が迫り、目先で発生する事象に対応しながらでも、適切な防災対策を確実に行える。
システムの基本性能については、清水建設が、2021年8月に生じた豪雨の際に、九州の同社工事現場で確認した。今後は、引き続き現場での実証運用を通じて、使い勝手などの改善を図り、早期の実用化を目指す。同時に、システムを活用した民間企業向けサービスの事業化に向けた準備も進める。
なお、サービスの提供費用は未定だが、防災行動計画策定とシステムのカスタマイズに伴う費用(実費)と月次のサービス使用料を想定している。
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