奥村組は、平常時の微小な振動から大地震時の大きな揺れまで対応する免震システム「オールラウンド免震」を開発した。オールラウンド免震を適用した宮城県黒川郡大和町の日進工具 開発センターでは、平常時における微振動と大地震の揺れに対する高い抑制効果を確認した。
奥村組は、平常時の微小な振動から大地震時の大きな揺れまで対応する免震システム「オールラウンド免震」を開発したことを2021年8月2日に発表した。
通常の免震建物は、地震時の安全性と事業継続性を高めるが、交通振動などの微小な振動については、非免震建物よりも影響を受けやすい傾向がある。そのため、精密機械を用いた生産や研究を行う施設では、加工精度や生産性の低下を招くおそれがあり、免震構造の採用が困難だった。
しかし、奥村組は、切削工具メーカーの日進工具から精密・微細加工拠点となる「日進工具 開発センター新築工事」を受注した際に、東日本大震災により保有施設に大きな被害を受けた経験から免震構造の採用を切望され、そのニーズに応えるべく、オールラウンド免震を開発した。
オールラウンド免震は、平常時の微振動に対しては微振動対策ダンパーの高い抵抗力により振動を抑制する。さらに、震度5弱以上の地震時には、微振動対策ダンパーが免震性能を損ねないように、微振動対策ダンパーと建物をつなぐせん断ピンが破断して建物から分離される機構を備えているため、搭載した施設を通常の免振建物として機能させる。
日進工具 開発センター新築工事では、開発センターが2019年11月に完成した後、常時微振動計測および地震観測を行い、その結果から、オールラウンド免震は、通常の免震建物に比べて平常時の微振動を大幅に低減し、微振動対策として有効であることを確認している。
また、2021年2月13日に発生した最大震度6強の福島県沖地震では、開発センターは、震度5弱の揺れに直面したが、優れた免震効果を発揮し、1階床の最大加速度が地下ピット床で生じた最大加速度の3分の1程度に緩和され、建物と内部の精密工作機械などは無被害だった。その際には、想定通りに建物から分離された微振動対策ダンパーは、地震の収束後、工場職員がマニュアルの手順に従ってすぐに復旧し、平常時の機能を速やかに回復した。このことから、オールラウンド免震がBCP対策に有効であることが分かった。
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