三井住友建設は、遠隔地から地震時における免震層の動きを計測可能なジョイスティック変位計を開発した。今後は、これまで免震層の水平変位を記録する手段として使用されてきた「けがき式記録計」に代わる計測システムとして、ジョイスティック変位計の適用を進めていく。
三井住友建設は、地震時に免震建物の動きを計測するジョイスティック変位計を開発したことを2021年1月29日に発表した。
地震が発生したときに免震建物の健全性や継続使用の可否を客観的に判断するためには、免震層の水平変位を計測する必要がある。免震層の水平変位を記録する手段としては、地震発生時に地面と建物がどのようにどれぐらい揺れたかの軌跡を板と針で見える化する「けがき式記録計」が多く用いられているが、建物の健全性が確認される前に、余震の可能性があるなかで、免震層に立ち入らなければ記録がチェックできないという課題があった。
また、けがき式記録計は免震層の最大変位やその生じた方向を確かめられるが、時間的な変化(動き方)は不明だった。時間的な動き方を捉える手法には、ワイヤ式やレーザー式といった変位計の設置があり、両変位計を使用した方法によれば免震層に立ち入らずに記録が可能だ。しかし、両変位計は、1方向の変位しか測れず、免震層の動きを捉えるためには最低2台の変位計が必要となり、コストがかさみ、さらに各変位計の設置が煩雑になり手間もかかるという問題があった。
そこで、三井住友建設は、低コストで、地震時に免震層の動きを遠隔で把握する変位モニタリングシステムのジョイスティック変位計を開発した。
ジョイスティック変位計は、建物内にある免震層の上下間で固定配置するもので、地震時に免振層で生じる水平方向の動きに合わせて伸縮ロッドが傾き、直交する2方向の水平変位を測定する。加えて、PCなどで使える専用システムと併用すれば、リモートで免震層の動きをリアルタイムに調べられ、免震層に入らずに、建物の健全性と継続使用の可否を地震直後に判断することができる。
ジョイスティック変位計の特徴は、伸縮ロッドをパーツに採用することで、水平変位±80センチの場合、半径80センチで、高さ150センチの円錐空間内に取り付け、設置高さの最小化と省スペース化を実現し、免震層への装着も上下部の固定だけと簡単で短時間で行える点。ジョイスティック変位計のコストに関して、一般的に用いられるけがき式記録計と同程度の費用で設けられる。
三井住友建設は、千葉県流山市の同社R&Dセンターで、振動台実験による性能検証を行い、ジョイスティック変位計の有効性を明らかにした。
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