地下状況を3Dモデル化し試掘作業を効率化する新アプリ、地図情報と統合して管理可能メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2021

ジオ・サーチは、試掘作業で撮影した写真あるいは動画をベースに、対象の地下を3Dモデル化するアプリケーション「しくつ君」を開発した。今後は、同社が展開している埋設物の調査業務に活用するだけでなく、外販も予定している。

» 2021年08月24日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 国土交通省や自治体では現在、台風や大雨といった自然災害で電柱が倒壊する危険性を踏まえて、地下や軒先に電柱の電線などを移動する無電柱化事業を推進している。しかし、地下に電線を敷設する工事では、正しい情報が無いことが原因で、必要な設備を埋設できず、手戻りが発生し、コストがアップするケースが多い。

 上記の解決策として、ジオ・サーチでは、計測速度が毎時80キロで、探査深度が1.5メートルの車載式レーダーシステムを用いて、地下と地上の3Dマップを作成するサービスを提供している。このサービスでは、専用車両に搭載した「電磁波多配列地中レーダー」で地下の埋設物を検知し、取り付けられた「3Dレーザースキャナー」で地上の点群情報を取得して、地下と地上の3Dマップを作り、利用者に提供する。

ジオ・サーチの車載式の「3Dレーザースキャナー」で取得した地上の点群情報
ジオ・サーチの車載式の「電磁波多配列地中レーダー」で得られた検知情報を基に作られた地下の3Dモデル

 使用される電磁波多配列地中レーダーの検知率は88%であるため、3Dマップの精度を上げる目的で、対象の地下を試掘して、状況を調べる場合がある。試掘作業では、現場を掘って、カメラで撮影し形状や特徴のメモをとり、その情報に基づき、事務所で地下の状況を見える化したCAD図面を作成する。しかしながら、得られた写真が対象物のどこを撮影したか分からないことやメモに誤りがあり写真とCAD図面に相違が生じるという課題があった。

 そこで、ジオ・サーチは、試掘作業で撮影した写真あるいは動画をベースに、対象の地下を3Dモデル化するアプリケーション「しくつ君」を開発した。同社は、メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)をテーマに掲げた建設総合展「メンテナンス・レジリエンスOSAKA 2021」(会期:2021年7月14〜16日、インテックス大阪)内の「無電柱化推進展」でしくつ君を紹介した。

作成された3Dマップはアプリ上で閲覧可能

 しくつ君は、試掘の対象エリアをスマートフォンもしくはタブレットで撮影した画像を専用クラウドにアップロードすることで、PDFやfbx、obj、las、xyzといったファイル形式で3Dモデル化が可能。また、作成された3Dマップはしくつ君で見られる他、地図情報と統合して、蓄積・管理される。

「しくつ君」で作成した地下の3Dモデル
会場内に設置された、試掘作業による地下空間の模型

 ジオ・サーチの担当者は、「しくつ君は、これまで必要であった試掘エリアのメモ作業を削減し、現場の業務をスムーズにするとともに、CAD図面の構築を効率化するのに役立つ」と話す。

 続けて、「現在、水道局や電力会社、NTTなどは、さまざまな業務で試掘を行っているが、その情報が共有されておらず、同じエリアを複数回掘削するという事態が生じているため、しくつ君でその無駄をなくしていきたい」と展望を語った。

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