応用地質がレーダー探査した「地下埋設物」を日立のAIで判定、占用者や施工者にクラウドから提供2020年4月に提供開始(1/3 ページ)

日立は2025年度までに、社会インフラ保守関係事業で1000億円の売上目標を掲げており、その一環として、同社のAIと応用地質の地中探査技術を融合させて、「地下埋設物」を3Dマップ化し、クラウドを介して第三者に提供する新規事業を2020年から開始する。

» 2019年09月06日 05時26分 公開
[石原忍BUILT]

 日立製作所と応用地質は、3次元地中探査技術で取得した複数の地下埋設物をAIで判別し、プラットフォーム上で地図と統合して、道路占用事業者や地下工事の施工会社に提供する新たなサービスを2020年4月からスタートさせる。このサービスにより、上下水道やガス、電気、通信などの道路占用工事で悩みの種だった現地調査の手間、設計の手戻り、配管の損傷事故などといった課題が解消される。

埋設管の布設工事の課題を解決、設計の手戻りや事故を防ぐ

 2019年9月5日に東京都内の日立本社で開催された会見で、両社の協業と、事業化に向けて同年10月からPoC(Proof of Concept)/PoV(Proof of Value)を進めていくことが発表された。

 新たな事業構想の背景には、地下に埋まっている上下水管やガス管などは現状、紙ベースの図面や台帳で管理されており、実際の地下状況とは異なっていることがある。とくに古い配管や過去に放置されたままの杭は、誰も把握しておらず、加えて上下水道/ガス/電線などは、各事業者が個別に管理しているため、目に見えない地下の実態を正確につかむのは困難になっている。

 そのため、道路占用工事の際には、時間と手間をかけて埋設物の調査を行う必要があり、複数回の試掘によって設計に手戻りが発生し、コストも余分に取られている。施工の段階でも、建機で掘削するときに、図面と現況が違っていれば、誤って配管を損壊してしまう事故も起きかねない。仮に災害が発生した場合には、正確な水道管の位置が分からなければ、復旧作業の遅延にもつながるといった数々の問題点が潜在的にある。

埋設管の布設工事における課題

 両社が立ち上げる新サービスでは、こうした埋設管の布設工事に関わる課題解決を目的に、多様な埋設物の情報をプラットフォームに集約して事業者に提供する。

 埋設物のデータ化は、地中レーダー探査で取得した情報を日立のAI(ディープラーニング)「Lumada」で分析して、空洞や埋設管、埋設物、地層などを判別。それぞれの形状を3次元モデル化して「簡易3Dマップ」を作成する。さらに詳しい地下の情報として、管種や寸法、材質といった属性情報と、制水弁や止水弁、ガスであればターミナルボックスといった地上の構造物を追加し、利用者にはより精緻化された「詳細3Dマップ」と、併せて2次元のCADデータを提供する。

 埋設物情報の掲載された2次元の平面図であれば、応札時の見積もり金額の適正化や図面作成の効率化に役立ち、3次元データは工事設計の精度向上や占用者協議の円滑な進行、現場ではMR技術により工事前にタブレット上などで埋設物の3Dモデルを映し出し、掘削位置や干渉チェックの確認を行うなど、2D/3Dそれぞれの利用が想定されている。

地下埋設物情報提供サービスの概要
3Dマップの作成イメージ
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.