施工場所にBIMデータを重ね合わせるMR施工管理アプリを開発、大林組BIM

大林組は、MR技術で、実際の施工場所にBIMデータを重ね合わせて表示し、設計情報の確認や検査記録の作成といった施工管理業務を効率化するアプリケーション「holonica」を開発した。現在、holonicaを幅広く展開し、BIMデータを活用した現場情報管理の一元化を進めている。

» 2021年08月20日 09時00分 公開
[BUILT]

 大林組は、MR(Mixed Reality:複合現実)技術を利用して、実際の施工場所にBIMデータを重ね合わせて表示することで、設計情報の確認や検査記録の作成といった施工管理業務を効率化するアプリケーション「holonica(ホロニカ)」を開発したことを2021年4月19日に発表した。

検査記録に3次元の位置情報を搭載

 同社は、現場の管理者全員がタブレット端末を携帯し、図面のチェックや検査記録の作成といった施工管理業務で、BIMデータを用いた一元的な情報管理を推進している。タブレット端末を使用した施工管理では、BIMデータを参照しつつ、現実の現場が設計図と一致しているかを調べ、進捗状況や検査記録などの情報をBIMデータの該当箇所に記録している。しかし、大規模な建設物では、情報量が多く、BIMデータの該当箇所を迅速に閲覧することが難しかった。

 解決策として、大林組はholonicaを開発した。holonicaは、BIMデータが持つ3次元の形状や仕様などの属性情報をMR技術により現地に重ね合わせて表示し、視覚的に設計を理解することを支援するとともに、対象部の施工管理情報をデジタル空間上の該当箇所に記録できる。

「holonica」による選択した部材の属性情報表示 出典:大林組

 具体的には、位置情報を利用し、BIMデータが持つ3次元の形状や属性情報を現地で任意の透過率で重ね合わせて表示するため、膨大な設計図書から必要な情報を探す手間を減らし、設計図と実物の違いをすぐに見つけられる。

 位置情報は、現地の床などに約15メートル間隔で配置したマーカーの認識と、タブレットのカメラで撮影した映像の変化などから姿勢や周辺環境を推定する「自己位置認識技術」により取得しており、従来のMRシステムよりも広範囲で高精度な計測に応じている。

「holonica」で位置情報を認識するためのマーカー 出典:大林組

 holonicaによる検査記録は、BIMデータ上に印を付けて専用のサーバに残せる他、3次元の位置情報を備えているため、現地の該当箇所が一目で分かり、問題があるかを判断しやすい。加えて、記録者の視点情報や属性情報も一緒に保存されているため、効率的に確認作業を行える。

「holonica」による検査記録の作成(左)と参照(右) 出典:大林組

 さらに、ホロラボが提供するクラウドプラットフォーム「mixpace(ミックスペース)」をベースにしており、スマートグラスやタブレット端末など、さまざまなデバイスから1つのBIMデータにアクセスできるため、利用シーンに適した機器を選べる。

 また、BIMデータのMR化に必要な変換、管理、表示機能を搭載したmixpaceとholonicaを連携することで、BIMデータを端末上でholonicaへドラッグ&ドロップするだけでMRを使え、3次元形状だけでなく、部材単位の寸法や符号、仕上げ方法などを含む属性情報をholonica上に表示可能。

 大林組では、階や部屋ごとに細かな設計の違いがあり情報の参照や記録が煩雑な内装仕上げ検査業務で、holonicaを適用して効果を検証した。検証の結果によれば、情報の伝達漏れを防ぎ、精度の高い施工管理を維持し、従来の紙図面を使った仕上げ検査と比較して作業時間時間を約30%短縮することが判明した。

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