大林組は、エム・ソフトとともに、LiDAR機能を備えたiPadやiPhoneで撮影した画像とAR技術を活用して、コンクリート打設で必要なコンクリートの数量を自動計算するアプリ「ピタコン」を開発した。エム・ソフトでは2021年5月にピタコンの一般販売をスタートし、大林組では、ピタコンを施工現場に取り入れ、生産性向上と残コンクリートの発生抑制による環境負荷の低減を推進している。
大林組は、エム・ソフトとともに、LiDAR(Light Detection and Ranging)※1機能を備えたiPadやiPhoneで撮影した画像とAR技術を利用して、コンクリート打設で必要なコンクリートの数量を自動計算するアプリ「ピタコン」を開発したことを2021年4月21日に発表した。
※1 LiDAR:赤外線を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を測定することで、物体までの距離や方向を測定する技術
コンクリート工事では、打設の1カ月以上前に図面から概算の打設数量を算出し、生コン工場の出荷枠を考慮して打設日の調整を行う。打設当日には、打設作業の合間を縫って打設済みの体積と残りの必要数量を2人1組で実測し、その日の最終的な納入数量を確定するが、計測ミスや計算ミスなどが原因でコンクリートの数量違いが生じるケースがある。
また、コンクリートの数量が不足した場合には、追加注文するが、生コン工場から現場へ到着するのには時間がかかるため、作業時間の延長やコールドジョイント※2の発生などを誘発し、品質の悪化やコストカットアップといった問題につながる。解決策として、余裕を持った数量を発注するが、コンクリートが余ることで処理費用が増加するとともに、不要な建設副産物の生産が環境負荷を増大させるという課題があった。
※2 コールドジョイント:先に打ち込まれたコンクリートの上に、後から打ち込まれたコンクリートが一体化しない状態となり、打ち重ねた部分に不連続面が生じること。水密性や耐久性に悪影響を与えるため、本来は先に打ち込まれたコンクリートが硬化する前に、次のコンクリートを打ち重ねる必要がある
そこで、大林組は、エム・ソフトと共同で、コンクリート床版を対象としたピタコンを開発した。ピタコンでは、1人の計測者がiPadやiPhoneの画面で、未打設範囲における平面形状の変化点や深さの計測点に仮想ポールを立てることで相対座標を記録し、コンクリートの打設済み体積と残りの必要数量を短時間に測れる。とくに、未打設範囲が不定形で計測に手間がかかるコンクリート床版の打設に対して高い時間の短縮効果がある。
さらに、ピタコン上で未打設範囲の外周を一筆書きの要領でプロットすることで、不定形であっても自動で面積を算出する。測定数に応じて平均値を取り、面積結果に深さの平均値を乗じることで残りのコンクリート必要数量も弾き出す。ピタコンの距離計測精度は10メートル以下の範囲で±3%以内となり、深さ計測の精度は1200ミリ以下の範囲で±30ミリ以内となる。
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