大成建設と岐阜工業は共同で、山岳トンネル覆工コンクリートの打設状況をリアルタイムに把握するモニタリングシステム「T-iMonitor Tunnel Concrete」を開発した。各種センサーで取得した情報が一元化され、打設状況の“見える化”と品質向上が実現する。
大成建設と、トンネル型枠の国内シェアの大半を有する岐阜工業は共同で、鋼製移動式型枠(以下、セントル)に設置した温度や圧力などの各種センサーを用いて、山岳トンネル覆工コンクリートの打設状況をリアルタイムに把握し、計測データを自動で記録するモニタリングシステム「T-iMonitor Tunnel Concrete」を開発した。
山岳トンネル工事では、トンネル壁面の仕上げで行う覆工コンクリート打設作業で、材料分離を発生させず、空隙が残らないようにコンクリートを型枠内に充てんして締め固める必要がある。そのため、覆工コンクリートの打設状況を常に管理しながら確実に施工することが重要とされる。
現状では、施工管理担当者がセントルに設置されている打設窓から目視で打設状況を確認しているため、全ての打設箇所の確認は困難だった。打設高さなどの打設履歴情報が紙で記録されているため、記録整理/帳票作成などの施工管理業務に時間を要することや関係者間での情報共有がなされないなどの課題があった。
大成建設と岐阜工業は、セントルに設置した多数の感知、温度、圧力センサーから得られた情報を一元的に管理し、打設状況の見える化を図った。さらに計測データを記録・分析し、今後の打設に活用することで覆工コンクリートの品質向上につなげる。
既に大成建設が施工を手掛ける岩手県宮古市の道路トンネル工事「国道106号磯鶏地区道路工事」に適用し、性能が実証されたという。
システムでは、計161カ所の感知センサーで計測した打設高さ、計15カ所の温度センサーによる打設中・打設後のコンクリート温度、15カ所の圧力センサーで取得するセントル面板に作用する荷重の各情報をリアルタイムに一元管理し、モニター画面で打設状況を可視化。計測データは、自動的にクラウドに保管されるため、施工管理業務の省力化と情報共有につながる。
品質管理面では、赤外線センサーで自動的に検知した打設時のコンクリートミキサー車の位置を同時に記録。どの車両から供給されたコンクリートが、トンネルのどの部分に打設されたかを確認することが可能となる。
施工時の各種センサーの計測データは、自動で記録。打設中または打設後の温度データから算出した積算温度に基づくコンクリート強度の推定をはじめ、セントル面板に作用する荷重の常時監視による打設速度の管理、天端部での充てん状況の把握などができ、覆工コンクリートの品質管理に役立てられる。各データは常に現場打設作業にフィードバックすることで、より一層の品質向上に貢献する。
トンネル供用後の維持管理・補修では、経年劣化による亀裂や剥(はく)離などが発生した際には、記録・分析されたデータに基づき、要因の分析を行い、対策を立案するときの材料としても使える。
今後、大成建設ではトンネル覆工の施工状況に合わせ、システムの機能や仕様などに改良を加えながら、山岳トンネル工事現場に積極的に展開していくとしている。
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