中国のドローンメーカーQYSEAは、高精度の測量ツールを取り付けられる全方向性4K中型水中ドローン「FIFISH PRO W6」を開発した。
国内では、ダムや堤防、橋梁(きょうりょう)、洋上風力発電所といった構造物の状態を、潜水して調査するダイバーの高齢化が進んでおり、効率的に調べられる方法が求められている。解決策として、水中ドローンが活用されているが、これまで構造物のひび割れを計測する際には、ドローンのアームにメジャーを持たせて測るケースもあり、水中の状況によっては、正確にひび割れの大きさが分からなかった。
上記の課題を解消するために、中国のドローンメーカーQYSEAは、高精度の測量ツールを取り付けられる全方向性4K中型水中ドローン「FIFISH PRO(フィフィッシュプロ) W6」を開発し、2021年4月に日本国内で発売した。
FIFISH PRO W6の販売代理店で、インフラ点検の事業も展開するジュンテクノサービスは、建設分野のドローンが集結する国際展「Japan Drone2021|第6回−Expo for Commercial UAS Market −」(会期:2021年6月14〜16日、幕張メッセ)に出展し、FIFISH PRO W6をPRした。
FIFISH PRO W6は、高精度の測量ツールとして「レーザースケーラー」と「測量アーム」を標準搭載している。レーザースケーラーは、取り付けられた専用の機器で2つのレーザーを対象物に照射し、ビーム間(10センチ)を参照して、測量が行える。測量アームは、アームが分度器と定規の機能を有しており、構造物の傷やひび割れを測れる。
測量に役立つオプションとしては、「ARスケーラー」「ソナーシステム」「QYSEA U-QPS 水中測位システム」「ドラップラー対地速度計」「陸上からの外部給電システム」を備えている。ARスケーラーは、FIFISH PRO W6に装着されたカメラで取得した対象物の画像を基に、QYSEAが独自開発した人工知能ビジョンアルゴリズムで、ひび割れのサイズを自動で算出する。
ソナーシステムは、専用のソナー「マルチビームイメージソナー」で、水中ドローンとターゲットとの距離を自動的に一定に保ちつつ、目標物をカメラで撮れ、対象物との距離も測定する「距離ロック」と、機体を海底から一定の高度に保つことで、海底の斜面や突起物に沿いながら、砂や泥を巻き上げずに航行する「高度ロック」といった機能を持つ。さらに、専用のソナーで、複雑な地形や突起物を自動で回避する「障害物センサー」と簡単な地形データを収集する「地形スキャン」も備えている。
ジュンテクノサービスの担当者は、「ソナーシステムは、水中の状態によってはソナーから放出される音波が反響しにくくなり、精度が落ちるが、そういった場合はレーザースケーラーとARスケーラーを活用することで、円滑に構造物の測量が行える」と説明した。
QYSEA U-QPS 水中測位システムは、QYSEAの専用アプリと連動するもので、座標と深度の表示やPoint of interest(POI、特定の地点)の記録、航行ルートの設定、自動航行、特定の位置で撮影した画像の再生といった機能を搭載している。
ドップラー対地速度計は、移動しながら海底あるいは海中に音波を放射し、反射・散乱波のドップラーシフト量から対地速度と耐水速度を測定する装置で、FIFISH PRO W6に付けると、複雑な海流の中でも、毎秒0.1センチの高精度で自動的にホバリングさせられる。陸上からの外部給電システムは、機体への継続的な電力供給を実現し、長時間の作業をサポートする。
FIFISH PRO W6のカメラは、2台のカメラで構成される「Dual 4K Camera」で、上部のカメラで前方を撮影しつつ、下部のカメラで海底を撮影できる。FIFISH PRO W6のバッテリーは高速充電に応じたインテリジェントバッテリーで、交換して使えるため、作業の継続を後押しする。
本体の性能について、「FIFISH PRO W6は、最大で深度350メートルの航行に対応するため、海の深くでも作業を行え、取り付けられたLEDライトは、1200ルーメンの照度で広範囲を照らせ、暗い水中でも視野を確保する。推進力となるスラスターは6つ搭載している他、内部に新型のモーターを組み込んでいるため、激流でも安定して動かせ、最大速度は時速7.4キロとなっている。稼働時間は使用状況によって異なるが最長で6時間を見込んでおり、操作温度はマイナス10〜プラス40度だ」と特徴を語った。
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