導入を決めたXtreeEの3Dプリンタは、6軸の垂直多関節ロボットで、積層ピッチは最小6ミリと高精度で、最大2.5メートルまでのサイズを出力する。小型の1500(幅)×300(高さ)×200(奥行き)ミリのモニュメントであれば約30分で成形するという。
「一般的に3Dプリンタは、XYZ軸の3方向で動くプリントヘッドを取り付けた“ガントリータイプ”と多関節で精密に動作する“ロボットアームタイプ”の2種類があるが、当社では外装化粧材で培ってきた意匠性を活用するため、複雑な形状や精緻なデザインを得意とするロボットアームタイプを選定。ロボットアームはABB製で、先端にモルタルを吐出するXtreeEのヘッドを搭載した高さ2メートルのプリンティング設備となっている」(平山氏)。
マテリアル(原料)は、3Dプリント専用のプレミックスセメントに水と混和剤をミキサーで混錬。吐出量は毎分1リッター、平均スピードは毎秒83ミリで出力する。成形サイズは、ロボットアームの届く範囲が楕円球体となるが、XYZ軸の干渉などを考慮すると、直方体の場合は2500(幅)×2000(高さ)×1000(奥行き)ミリが最大サイズとなる。
初段で想定される用途は、門塀・門柱・外壁などの外溝材、公共施設のベンチ・モニュメントといった景観材、スツール・テーブルなどのファニチャー類の受注生産から事業をスタート。その先には、CO2排出量を削減できる材料の開発やプリンタの大型化、建築現場で製作するオンサイト化なども検討し、土木向けの護岸・橋梁(きょうりょう)・トンネルなどへも訴求。クラボウでは、3Dプリンティング事業で2024年度には10億円の売上高を目標に据えている。
3Dプリンタの技術開発では、押し出しと積層の繰り返しで製作していくため、一層ごとの強度=「層関強度」が、品質をいかに安定させるかの焦点となる。連続してモルタルを安定的に吐出する流動保持性、高く積層しても崩れない自立安定性、適切な圧を調整するポンプ圧送性が重要な要素で、そのため製作現場でのマテリアルの配合方法や成形技術、設計力が問われる。
平山氏は、「当社が建材メーカーとして蓄積してきたノウハウを転用し、配合・成形・設計の技術を高め、事業展開していく。国内にはまだ市場が形成されていないため、建築手法やデザイン造形、環境配慮などの面で、既に数社とNDAを締結してパートナーシップを結んでいるが、より裾野拡大のために幅広い業種の企業との協業を模索している」と展望を語った。
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